悪くはないのだが、ミスキャストでは?~グローブ座『ロミオとジュリエット』(配信)

 グローブ座『ロミオとジュリエット』を配信で見た。ドミニク・ドロムグール演出で2009年に上演されたものである。上演当時はロミオもジュリエットも新人だったと思われるのだが、ジュリエット役は後に『ゲーム・オブ・スローンズ』でミーラを演じたエリー・ケンドリック、ロミオ役は後にサッカーゲームFIFAシリーズでアレックス役を演じるアデトミワ・エドゥンである。

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 グローブ座らしいオーソドックスな上演で、音楽沢山使われ、衣類などは近世風である。若々しいカップルの初々しい恋に焦点をあてた演出だ。笑うところはたくさんあり、とくにジュリエットがバルコニーで独白する場面でちょっと下ネタがあったりするあたりは面白い。修道士というにはくだけた感じで、花かごをかついで出てくる気さくな近所のおじちゃま風に作ってあるローレンスや、労働者階級の女性のアクセントで話す、とぼけた人間味のある乳母などは良い。乳母がパリスと結婚するようジュリエットにすすめるところでは、本当にジュリエットのことを心配して、生きるための手段をアドバイスしているように見える。

 演出の特徴としては、わりとカットがなく、さらにカットの仕方がちょっと変わっているというのがある。だいたいふつうの上演ではカットする、ジュリエットが亡くなった後の音楽家たちのくだりがカットされていない。パリスの死もカットされていないのだが、ここのロミオとパリスの決闘場面で、サンダーシートかというような騒々しい音を使っているところも特徴があった(ここはおそらく台詞に雷が出てきているのと呼応していると思われる)。

 ただ、これは私の意見だが、正直ジュリエットがかなりのミスキャストだと思う。ケンドリックのジュリエットはすごく可愛いくて若々しいのだが、可愛いだけで芯の強いしっかりした感じがあまりなく、ロミオと話しているところでもちょっと台詞が平板に聞こえるところがある。ロミオは大変魅力的で爽やかな若者なのだが、あまり2人の間にケミストリがないように思われるのが残念だ。