ホワイトプランの白戸家って実は結構「クィアな家族」だよね

 実は私はソフトバンク白戸家のお父さんの隠れファンなのだが(北海道犬で同郷人だしね)、ホワイトプランの新しいCMがとても面白かった。

 新しいCM↓
「実家」編


 犬になっちゃったお父さんが一乗谷の母(若尾文子。相変わらず着物姿がお美しい+信じられないほど若々しい)のところに里帰りするのだが、出迎えた若尾母に「元気ならそれでいいや」と言われて「こんなに変わってても?」とお父さんが返事すると、「気にせん気にせん」と若尾母が返すのがとてもいい。


 …それで、この会話を見てふと、実はこの白戸家のお父さんって結婚後に性別を変えたトランスジェンダーみたいに描かれてるよなと思った。同窓会のCMからすると白戸家のお父さんは若い頃は人間だったみたいだし、たぶんお母さんと結婚した後で白犬になったのだと思う(そうでないとダンテ・カーヴァー上戸彩は生まれないはずだ…いや、どっちも養子かもしれないし、お母さんのほうの連れ子かなんかかもしれないけど)。彩が生まれた後にお父さんは犬になってお母さんと性関係はなくなったようだが(生々しい話してゴメンね)、それでも友達夫婦で離婚もせず仲良くしているらしい。

 結婚して子供を作った後でやっぱり自分は今の性別とうまくつきあえない、性別を変えたいと思う人は割合いるらしい。そう考えると白戸家のお父さんの人間から犬への変身は、トランスジェンダーの性別変更となんとなくかぶるところがある。犬になっちゃった息子への若尾文子の反応も、なんとなくカミングアウトしたセクシャルマイノリティの息子を元気づける母みたいに描かれているといえなくもない。


 そう考えると、ホワイトプランのCMは一見お笑い話のように見えて、実は大変「クィアな家族」を描いたお話であるようにも思えてくる。この家族は、構成自体は「夫婦と子ども」という伝統的な型にはまるようにできているのだが、ひとつひとつの構成要素が全然伝統的じゃないのである。お父さんは犬だし、長男だけなぜか民族が違ってアフリカンだし、島根のおじさまに至ってはイルカだ。白戸家は実は多民族かつトランスジェンダーな家族を象徴しているように見える。


 macska dot orgによると、ジュディス・ハルバースタムは『ファインディング・ニモ』を「クィアな家族」の映画だとして褒めていたそうで、それというのもこの映画はトラウマを抱えたシングルファーザーのマーリンと障害のある一人息子ニモというカクレクマノミの父子家庭に、激しい記憶障害を持つハギのドリー(雌魚みたいなのだが、最後にマーリンとくっついたりは全然しないのが潔い)が協力するという全然「ふつう」じゃない家族を描いた話だからなのだが、よく考えると白戸家の「ふつう」じゃないっぷりは『ファインディング・ニモ』に匹敵するような気がする。


 …しかしながら、ヘンなメス魚が登場する『ファインディング・ニモ』と白戸家が最も違う点は、白戸家においては家族に非伝統的要素を持ち込んでいるのが全員男性だってことである。白戸家の構成員の中でも、若尾おばあちゃんと樋口お母さんと娘の彩は全員人間でおそらく日本人の女性である。動物だったり他の民族的バックグラウンドを持っているのは全員男性側に属するメンバーだ。このへん、実に「日本的」な家族観が表出しているような気もする。日本の家族って、昔は割合双系的で女性に財産権や子供の養育義務があったりとかしたせいなのか、少なくとも文学とかではお母さんを中心に形作られることが多いように思うのだが、白戸家は男性はみんなヘンだけど女性はみんなしっかりしていて美人の人間で働き者だ。男性がいくらヘンでも、女どもが常識的で立派なら家族が成り立つらしい。


 白戸家は日本のCMに出てくる中ではトップクラスにクィアな家族だ思うんだけど、どうやらクィアな女性が活躍する家族が出てくるにはまだまだ時間がかかりそうである。