ナショナルヒストリーと余裕、でも怖い〜帝国戦争博物館

 昨日は授業の後、ランベスパレスに近い帝国戦争博物館にも行ってきた。ここは入場料がタダだし、かなり大きい。

 入り口。

 大砲がふたつも並んでいて怖い。


 地階ホール。いきなりたくさんの飛行機と戦車がお出迎え。


 頭上のナチス。怖すぎる…

 これ、近くのキャプションに爆弾がどうだとか書いてあったので爆撃機だと思ったのだが、よく考えると近くにある別の飛行機のキャプションだったかも。


 防空グマ。

 あまりかわいくない。


 銃後コーナー。


 ヒトラーの諷刺プロパガンダ漫画。 

 個人的に、"Adolf in Blunderland"「ヘボの国のアドルフ」はかなり笑えた。どうも『我が闘争』のパロディらしい絵本のタイトルになっている"Rampf"って何?


 よっぽどヒトラーが嫌いらしい。当たり前と言えば当たり前だが…



 塹壕体験コーナー。

 塹壕はとにかく悪臭がひどくて、あと閉所恐怖症なら一時間もいられないに違いないと思う。こんなひどい所で暮らしたくない!

 
 これ、全部塹壕の名前を書いた看板らしい。

 塹壕体験だけじゃなく空襲体験コーナーもあるのだが、これは一日何回かしか行われないようで、体験できなかった。



 よくわからないのだが、どうも真ん中を銃弾が貫通したらしい本。怖い… 


 「日本降伏」の新聞。号外かな?


 「子供の戦争」

 はっきり言ってこのコーナーはつらい。とくに最初のあたり。戦争で亡くなった子供の写真とかが飾ってあるので、見ていて非常につらいものがある。

 
 ただし、途中からは子供の戦時生活の展示に。
 相変わらず蛇蝎のように忌み嫌われているヒゲのおっさん。


 戦時中の子供の遊びについての展示。

 主におもちゃなどが置かれているのだが、『オズの魔法使い』の昔のトレーラーも。

 すっかり忘れてたけど『オズの魔法使い』って1939年の映画なんだって!そんなに古いとは…今見ても全然古くなってないもん。


 階段を上りきったところにある不発弾。怖い…


 …またナチス。よく見えないけど鷲の足の下がハーケンクロイツになっている。怖すぎる…


 冷戦。左がワルシャワ機構、右がNATOで国旗を配置してある非常にわかりやすい展示なのだが、ライトが赤っぽいためいまいち写真が不鮮明。


 1945年から1995年の間にイギリスの軍人が殺されなかった年は一年しかなかったらしい。

 …世の中は全然平和じゃないようだ。


 モンティ・パイソンの名前の由来になったモンティことバーナード・モンゴメリ元帥の展示。


 「戦場の匠」だったそうな。


 「戦いの技術とは、最小限の損失で目的のものを得ることである」


 この後ホロコースト展を見てきたのだが、これはもうちょっと怖すぎた。14歳以下はdisturbingなので入れないと書いてあったのだが、まあ本当にお年寄りや子供は見ないほうがいいと思う。別にそんなすごいあからさまな残虐描写があるわけではないのだが、フィルムの中で別にいい人そうな感じの普通のドイツの労働者がなんか叫んでて字幕見たら「ユダヤ人の支配から我々を解放せよ!」とかなんとかだったりとか、穴を掘った上にユダヤ人らしい人を座らせて頭を銃でねらう兵士の写真があったりとか、記録映像や画像が生々しすぎる。初期近代演劇なんかやっていて恐ろしい話にはずいぶん慣れているはずなのだが、さすがにちょっと息が苦しくなるような恐怖を感じた。



 …さて、なんか怖くなってきたところで「食糧省」の特設展示前にあるショップ。




 全部食べられるのかと思うとちょっと寂しい気持ちになるのだが、まあちょっとめんこい。恐怖をなごませるにはぴったり。ただ、食糧省の特設展示はお金がかかる上もうあまり時間なかったので見れなかった。


 こういうふうにいろいろ写真をとってきて貼ってみたのだが、その理由は、なんかイギリスの戦争博物館というのは第二次世界大戦の歴史叙述がはるかに日本よりも「余裕」がある感じで、ちょっとそれをなんとなく感じ取ってもらえたらいいなと思ったからである。なんと言ってもイギリスは第二次世界大戦では勝っているし、連合国の他の国に比べても後ろめたいところやトラウマが非常に少ない。どうも、首都が空襲にあって国王夫妻が焼け出されてもなお徹底してナチスと戦ったのだという誇りがあるみたいだ。原爆を落としたり落とされたりしたわけでもないし、捕虜の扱いについてもおおむね人道的だったらしいし、フランスみたいに対独協力者の女性を大々的にスケープゴートにしたとかいう悪い噂もあまりきかないし、インドや中東ではそれなりに悪いことをしていたのだろうがそのあたりは第二次世界大戦の主な注目箇所ではないからあまり人目に触れてない(インドとかの人にとっては噴飯ものだろうが、イギリスとしては「ファシズムとの戦い」という位置づけにしたいようだ)。日本だと全体主義→原爆→無条件降伏だし、ドイツだとナチスドレスデン空襲→敗戦ということで全くトラウマのない部分が一切ないような歴史叙述になる気がするし、アメリカだと戦後の歴史を見るとちょっと端から見ると首をかしげたくなるようなところがあると思うのだが、イギリスはそのあたり非常に戦史について余裕があって、「戦時下でもヒトラーをネタにジョークを作るユーモアに富んだ英国民」とか「疎開時も遊びを忘れぬ子供たち」とか、そういうものを展示の中心に持ってこられる元気があるみたいだ。これは良いとか悪いとかじゃなくただ驚くほかなかったのだが…でも、たぶんナショナルヒストリーっていうのはこういう「余裕」に左右されつつ作られるんだべなーとは思った。