いい芝居だけど、服のチョイスでぶちこわし!トラファルガースタジオ『リタの教育』

 トラファルガースタジオで『リタの教育』(Educating Rita)を見てきた。

 これはウィリー・ラッセルが1980年に発表した非常に有名な戯曲で、登場人物はリタとフランク先生の二人だけ、セットはフランクの研究室のみという簡素な芝居である。イギリスの大きな街(リバプールあたり)で美容師をやっている26歳の既婚女性リタは知的好奇心にかられて通信大学に登録し、指導教員でアル中気味のフランクのところに通う。ワーキングクラス出身で全く詩とかを知らないものの学ぶ楽しさに目覚めてどんどん知的な女性になっていくリタと、相変わらずアル中のフランクの軽妙でたまにシリアスなやりとりから観客にいろんなことを考えさせる…という、二人芝居の手本のような脚本である。

 とにかく脚本が面白くてよくできてるし、二人芝居なんだけど役者は両方とも素晴らしいし、基本的には良かったのだが、問題はファッションセンスである。第一幕のリタはワーキングクラスのオシャレな女性で、足がきれいに見えるミニスカートにピンクのハイヒールをはいて、場面がかわるたびに着替えて入ってくる。ところが第二幕、サマースクールで勉強したあとのリタは黒っぽいロングスカートに白と茶系のカーディガンという地味な服装になり、最後にその上に赤いコートをはおってくるまでほぼ着た切り雀。実は最近ツイッター上でミニスカートに対する侮蔑発言が話題になってたりしてその連想もあるかもしれないのだが、脚本では「古着で違う服を着て出てくる」としか書いてないのにこうなるのはなんかほんとおかしいと思ったなぁ…それに最後にフランクがリタに「教養ある女性に」って言って黒いドレスをプレゼントするところの色のチョイスも微妙だった。なんていうか、ミニスカートで足を見せる=ワーキングクラスの教養のない女性、地味で色も柄もないロングスカート=教養ある女性、っていう二分法はすごく差別的っていうか時代遅れじゃない?同じウェストエンドで、「ピンクを着たまま女性が成功するには」というテーマの『キューティ・ブロンド』が上演されていることを思うと、こういうファッションのチョイスは非常に理解に苦しむところなのだが…最後の場面ではミニスカートに戻って出てくるかと思ったけど、そのままだったしなぁ…


 と、いうわけで、大変よくできた公演だったけど舞台衣装だけは全然ダメだった。