個人的に嫌いなタイプの芝居~オールド・ヴィク『フェイス・ヒーラー』(ライヴ配信)

 オールド・ヴィクの有料ライヴ配信で『フェイス・ヒーラー』を見た。アイルランドの有名劇作家ブライアン・フリールの作品である。

www.oldvictheatre.com

 この作品は全編モノローグでできている。第1部と第4部はアイルランド生まれのフェイス・ヒーラーであるフランク・ハーディ(マイケル・シーン)、第2部はその妻グレイス(インディラ・ヴァルマ)、第3部はマネージャーのテディ(デヴィッド・スレルフォール)のモノローグでできている。それを通してフランクの山あり谷ありのキャリアとどうやらそれが悲劇的な形で突然終わったらしいことが示唆される。

 出てくる3人の演技は非常に完成しているし、フェイス・ヒーリングをパフォーマンスの一種ととらえた芝居についての芝居で、テーマは興味深いと言える。しかしながら私は正直、この芝居ってこういうソーシャルディスタンシングをしないといけない状況以外でライヴ上演する意味があるのだろうか…と思ってしまった。まあこういう芝居を評価する人がいるのは理解できるし、役者同士もできるだけ距離をとらないといけない状態でこの演目が選ばれたのはよくわかる…のだが、完全な一人芝居ならともかく、複数人が出てくるのに人物同士のインタラクションがなく、モノローグだけでたいして動きもない芝居というのは私にとっては全く面白くないし、そんなら小説でいいじゃないかと思ってしまった。また、撮影のほうもあんまり慣れていないのか、テディがフェイス・ヒーラーの看板を指すところで看板を移さずテディの顔だけにフォーカスしてしまったり、ただでさえ少ない動きをあまり生かせていない感じの撮り方になっているところも良くなかった。