クリストファー・ザラ監督『型破りな教室』を試写で見た。実話をもとに脚色したお話だそうである。
舞台はアメリカ合衆国との国境に近いメキシコの町マタモロスである。非常に治安が悪くて貧しい地域で、子どもたちはまともに教育も受けられずに非行に走りがちだ。ところが新しくやってきた教員であるフアレス先生(エウヘニオ・デルベス)は子どもに実践から考えさせるような教育手法でめざましく学力を向上させる。しかしながら貧困や犯罪の横行のせいでなかなか子どもたちの教育はうまくすすまない。
教員としては、子どもが興味を持ちそうなことを入り口に、いろいろな実験をやらせて知的好奇心を引き出すフアレス先生の教育手法が大変面白く、見習いたい…と思うところが多い一方、子どもたちが置かれている環境が厳しすぎてなかなかキツいところもある映画である。ロクな教育設備がなく、本来は予算がついて設置されているはずのコンピュータ室はないし、図書室は四角四面な運営で全然授業支援をしてくれない。途中までは優等生のパロマ(ジェニファー・トレホ)と成績が悪くて非行予備軍扱いのニコ(ダニーロ・グアルディオラ)のかわいらしい初恋の話などもあるのだが、これもえらいバッドエンドを迎える。貧困のせいでいくつも立ちはだかる壁がつらいが、最後は若干希望のある終わり方になっている。
フアレス先生役デルベスをはじめとして子役も含めて演技がしっかりしているし、厳しい現実と理想を織り交ぜながら教育の力を強調している作品である。途中の実験をしながら子どもたちが学んでいくところは笑いもある。ただ、全体的に手持ちでけっこうカメラがブレブレなのはきつかった。