O2アリーナ、ロイヤルバレエ『ロミオとジュリエット』〜とても良かったが、箱がデカすぎて…

 初めてノースグリニッジのO2アリーナに行ってロイヤルバレエ『ロミオとジュリエット』を見てきた。主演のタマラ・ロホとカルロス・アコスタはどちらもスターだそうで、ロンドンでもそこらじゅうにポスターが出てる話題作。うちは全然知らなかったのだがロホは日本でも人気があるみたいで、この公演についてガーディアンにインタビューを受けていて日本語のバレエブログに和訳まで出ている。


 ロイヤルオペラがO2アリーナでバレエをやるのは初めてらしいのだが、まあO2アリーナって2万人以上入るそうでとにかくデカい。普段はメタリカとかがライヴやるそうで、雰囲気も客席の作りも普段見に行っているコヴェントガーデンの箱とは全然違っていて、若者とか郊外住まいの家族みたいな人たちも多い。

 で、あまりにも箱がデカすぎるので舞台の上にスクリーンをつけて、それで舞台の様子を写して後ろのほうの人にも細部が見えるようにしている。とにかくわかりやすい演出を目指しているようで、舞台装置を変える際にはこのスクリーンに場面の転換を示すような映像を映し出して原作のシェイクスピアの台詞をナレーションとして読みあげるなど、普段はバレエを見ないお客さんでもわかるようにいろいろ工夫している。
 
 面白いのはオーケストラピットが舞台の二階にあることである。一番下の舞台には階段とバルコニーのセットがあってここでダンサーが踊り、その舞台の上の階にガラス窓で覆われたオーケストラピット、さらにその上に映像投影用の大スクリーンが三枚ある。照明の加減によっては客席からオーケストラピットがかなりよく見える。あのオーケストラピットのスペースはロックのライヴ用か、あるいはスポーツやる時に中継機とかを入れるのかな?


 と、いうことで、最初はいつもと箱があまりにも違いすぎてちょっとどぎまぎしてしまったのだが、パフォーマンスは大変良かった。踊りのことは全然わからんのだが、タマラ・ロホは30代後半らしいのだが全くそうは見えず、踊っているときは本当に生き生きしていて十代の純情な跳ねっ返り娘にしか見えない。とくに動いている時だけではなく、静止して内省する場面とかでもとても表情豊かで姿勢が美しいのに驚いた。相手役のカルロス・アコスタももう三十代だそうでやたら顔が濃いのだが(キューバ系らしい)、踊っているときはセクシーな十代の若者に見えるから不思議である。しかもセクシーでヴェローナの女の子からモテモテであるわりには(街で女の子にちょっかいをかけられる演出がいくつかある)ジュリエットの前では舞い上がってぼんくら同然な感じで可愛らしい。


 そんなわけでパフォーマンスや演出には文句がなかったのだが、やはり箱がデカすぎるのは気になったな…まず、細かい演出が大変見えにくい。あと、コヴェントガーデンの劇場だと、上演中に劇場に出入りする人があまり目立たないんだけど、O2アリーナだと一階座席は平戸間に椅子を置いたような作りなので通路を行き来する人がかなり目立っていた気がした。それからなんか寒かった!ライヴとかだとみんな立って体を動かしたりするから暑くなるのだろうが、バレエだとみんな大人しく座って見ているのでわりと寒かった。