『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』〜やっぱバンクシーは妖精だって。絶対。

 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を見てきた。去年UKで上映された時はlimited releaseかなんかで見逃してしまったので日本で見れて良かった。

 これはイギリスの著名なストリートアーティスト、バンクシーの監督作品で、ロサンゼルスに住んでいる変人のフランス人ティエリーがストリートアーティスト「ミスター・ブレインウォッシュ」として成功するまでのイカれた道のりを描いたドキュメンタリーである。しかしながらドキュメンタリーにしては途中非常に「パフォーマンス」っぽいなと思うところもあり、全部示し合わせてやってるのではという気がしないでもなかったな…モキュメンタリーなのではという説もあるらしい。


 で、すごく笑えるというのでかなり期待して見に行ったのだが、思ったほどは面白くなかった気がする。こういう「作品の質ではなくパフォーマンスの派手さが人気を作るのだ」みたいな話って、演劇やロック、あるいはテレビ番組だと結構よくあるストーリーであるような気がするので、それをアートでやったからといって別段新しいようには思えなかったのだが…まあそれでも笑えるところはかなり笑えたし、もっとアートがわかる人はきっと面白かったのだろうと思う。
 

 あと、私はかねがね思っているのだが、バンクシーがイギリスで人気あるのって、おとぎ話に出てくるトリックスター(いたずらしまくる妖精パックとか)や反骨の英雄(ロビンフッドとか)を面白がる伝統があるからだよね?以前ブリストルに行ったとき、美術館にバンクシーの作品が展示されてて解説文に"folk hero"って書かれてたのでははあなるほどと思ったんだけど、この映画に出てくる、街中に置かれているバンクシーの作品を見た人たちの反応を見てさらに「ああ、バンクシーの作品ってたぶんイギリス人にはアートとかそういう小難しいこと以前に『おとぎ話に出てくる悪賢い妖精のいたずら』とか『悪代官の鼻を明かしてやった森の知恵者』みたいなレベルで面白いんだろうな」と思った。日本には妖精ならぬ妖怪がたくさんいるが、妖怪路線のストリートアーティストっていないのだろうか。