公営住宅から出た最後のロックスター〜『オアシス:スーパーソニック』

 『オアシス:スーパーソニック』を見た。オアシスのドキュメンタリーで、ギャラガー兄弟を中心にデビュー直前くらいから1996年のネブワースでのライヴまでを追った作品である。

 けっこう初期の頃から映像が残っているのと(編集や修正などはしてあると思うが)、ギャラガー兄弟他関係者の回想などがきちんと入っており、わかりやすいドキュメンタリーになっている。

 で、とにかくギャラガー兄弟は人格に問題がある。リアムは「ロックスター」を地で行くメチャクチャな傍若無人ぶりですぐケンカしたりサボったりする手の付けられないワガママ青年だし、ノエルはそれに比べればマシなのだが強烈なプロ意識を持った頑固な芸術家タイプで大変に気難しく、絶対に一緒に仕事をしたくないタイプのボスだ。とはいえ2人とも間違いなく才能に溢れたミュージシャンで、ノエルは稀代のソングライターだしリアムは美声でカリスマ的なフロントマンだ。とくに初期の頃のエネルギッシュなステージは今見てもうっとりしてしまうくらいキレッキレである。

 また、このドキュメンタリーで重要なのは、ギャラガー兄弟がカウンシルエステート(公営住宅)育ちだということが強調されており、そういうスターがもうイギリスで出なくなってきていることに注意が向けられていることである。ポピュラー音楽がミドルクラスになってきてるというのはよく言われる話だが、これは問題だと思う。まあ、ジェイク・バグとか期待してもいいかもしれない人はいるのだが…