ウェールズの農場にある音楽スタジオのドキュメンタリー~『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』

 『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』を見た。

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 1960年代初め、ウェールズのモンマスシャ、ロックフィールドに住むキングズリーとチャールズのウォード兄弟が、農家の一部をスタジオに改装したことがきっかけで生まれた滞在型スタジオに関するドキュメンタリーである。ウォード兄弟じたいのバンドはものにならなかったが(ジョージ・マーティンに没にされたらしい)、あまりスタジオがなかった時代でもあり、どんどん評判を呼んで多くのアーティストが録音に訪れるようになったらしい。ブラック・サバスからオアシスやコールドプレイまでそうそうたるバンドが録音に来ており、とくにブリットポップの時代は大人気だったそうだ。

 各時代を代表するミュージシャンがインタビュー取材を受けており、オジー・オズボーンロックフィールドに来るまでスタジオどころか農家すら見たことなかったとか、オアシスのリアムはモンマスのパブがお気に入りで早く上がって飲みに行けるよう真面目に録音してたとか(リアムがパンクチュアルに仕事するって、どんだけいいパブなんだろ…)、面白い話がたくさん出てくる。ストーン・ローゼズはえらく長い間ここに缶詰だったためか取材に答えてくれなかったとか、またシャーラタンズのメンバーであるロブはここに滞在している時に交通事故で亡くなってしまったとか、必ずしも良い思い出にならない話もある。クリス・マーティンが「イエロー」(とくに好きだと思ったことはない曲なのだが)をここで書いた時の話は大変興味深い。

 ブリットポップの立役者ということで、よく考えると私が子どもの頃に聴いていたような音楽の多くがここで録音されていたわけだが、ちょっと面白いと思ったのは、90年代に来ていたのはほとんど男性バンドだったらしいということだ。運営しているウォード一家の記憶によると、女性もいないわけではなかったがとくに男性バンドに気に入られていたらしい。男性バンドが農場を気に入るのは何か理由があるのか、それともブリットポップがわりと男性中心のムーブメントだったからというだけなのだろうか…