サントリー美術館「歌舞伎座新開場記念展:歌舞伎―江戸の芝居小屋」展〜楽しいけど、もうちょっとデジタルを

 サントリー美術館「歌舞伎座新開場記念展:歌舞伎―江戸の芝居小屋」展を見てきた。新しい歌舞伎座こけら落としを記念した展覧会で、主に桃山時代から江戸くらいまでの絵画資料を中心に、歌舞伎の劇場はどのようなものだったのか、どのように受容されていたかを見せるというものである。もちろん絵が中心史料なのでその絵の表現は現実の写実的描写というよりは当時の人が抱いていた歌舞伎というもののパブリックイメージを多分に美化(あるいは嘲笑)して表現したものであるわけだが、歌舞伎がまとっていた華やかなイメージがわかるだけでものすごく芝居の歴史を知るには役立つし、豊富な図像を見ているだけで単純に視覚的に面白くてうきうきする。

 とくに面白いのは観客に関する展示コーナーがあることで、贔屓連中に関する解説とか、歌舞伎に群がる観客を面白可笑しく描いた絵とかは歌舞伎以外の観客研究をしている人にも面白いと思う。やっぱりお客さんがいないと芝居というのは成り立たないのだ。

 ひとつ少し残念だったのは、絵を見せてあとはお客さんの想像にまかせる感じで立体的な展示が結構少なく、華やかな展示物とはうらはらに展示の作りとしてはかなり禁欲的な印象を受けること。着物や使用する楽器などを少し置いてあるのだが、もっとデジタル人文学に寄ってデジタル復元とか、あるいはアナログでもいいのでジオラマや模型を使った劇場展示などをもっと増やしても良かったかもと思う。これにデジタル人文学を入れたらもっと華やかで芝居を見ない人にもわかりやすい展示になるんじゃないかな?