私もこういう研究を(ネットのおかげで)しています!〜佐滝剛弘『国史大辞典を予約した人々: 百年の星霜を経た本をめぐる物語』

 佐滝剛弘国史大辞典を予約した人々: 百年の星霜を経た本をめぐる物語』(勁草書房、2013)を読んだ。

 これ、国史大辞典を予約した人の「芳名録」(ほとんど残っていない貴重な灰色文献らしい)を手がかりに、それぞれの予約者のバックグラウンドなどを調査した本である。著名人からはじめて図書館とか学校とかまでいろいろ調査し、芳名録にない人でもどうやら国史大辞典を買ったと思われる人の調査にまでもう少し広がっている。基本、調査過程の紹介以外は淡々と予約者の人名と人物基本情報が続いているだけの本なのに、国史大辞典がお値段にもかかわらずさまざまな職業・来歴の人に予約され広がっていったことがわかり、これが受容史の醍醐味…と思った。

 で、私もシェイクスピアだけど同じような研究をしているのでわかるのだが、こういう研究はネットがあるからこそ進歩したものである。私の場合、手がかりは蔵書票とかなのだが、名前と住んでいる街、せいぜい年代、あたりから該当人物をピンポイントで探し出すのってかなり難しい。それでまずやってみるのはダブルクォーテーションでくくってグーグルにきくことだ。それでグーグルブックスとかどこかのアーカイヴの目次とかで少しでもヒットすれば、図書館や文書館に出かけていって本当にその人かどうか確認する。書籍媒体以外に調査方法がなかった時代はこの「グーグルで手がかりになりそうな文書を探す」プロセスだけで数日かかっていたであろうことを考えると、こういうたくさんの読者の背景をあぶり出すような研究というのはデジタルの時代の賜物だと思う。なんだかんだでグーグルには感謝せねばならない。