とても良い映画だが、流れにはちょっと問題がある気がする〜『ウインド・リバー』(ネタバレ)

 『ウインド・リバー』を見てきた。

 舞台はワイオミング州の先住民居留地があるウインド・リバー。野生動物の監視員で腕利きのハンターであるコリー(ジェレミー・レナー)は、雪の平原で陰惨な性暴力を受けて凍死している少女の死体を発見する。調査のため新人のFBI捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)が派遣されてくるが、広大な土地に6人しか警察官がおらず、しかも白人による先住民差別や貧困、暴力が蔓延する居留地では捜査が難航し…

 先住民の女性に対する暴力犯罪という現代アメリカの見過ごされてる大問題を扱った大変重厚な社会派ミステリで、とくに雪の上についた足跡から動物を追い詰めるプロであるコリーのキャラクターが大変良い。コリーは大変優れたハンターで捜査をする姿は大変かっこいいのだが、過去の事件のせいでひどいトラウマを抱えてそのせいで先住民と妻とも離婚し、孤独に暮らしている繊細な人物でもある。先住民の問題を扱っているのに相変わらず主人公は白人というところはまだちょっと不足な気もするが、そこを差し引けば、かっこいいところと繊細なところを絶妙なバランスで見せたレナーの演技は素晴らしい。ジェーン役はイマイチ掘り下げられてない気はするのだが、ジェーンとアリスの会話でベクデル・テストはパスする。雰囲気としては、オザークのスコッチアイリッシュコミュニティを描いた『ウィンターズ・ボーン』によく似ており、ちょっと『スリー・ビルボード』とも共通点があるかもしれない(笑うところはあんまりないが)。

 ただ、全体としてはよくできた映画なのに、途中で一箇所だけ長めのフラッシュバックがあって、そこだけフツーの犯罪映画みたいなのはちょっと映画文法上良くないような気がした。他の部分は抑えたトーンで少しずつ真相に迫っていくのに、このフラッシュバックシークエンスだけやたらストレートな感じでいきなり真相が明らかになるので、ちょっと唐突な印象を受ける。もっとフラッシュバックをばらしてコリーが少し手がかりを見つけるたびに少しずつフラッシュバックがあるとか、あるいはいっそフラッシュバックは全部なくして別のやり方で真相がわかるようにするとか、そういう工夫をしたほうが映画の流れとしてはよかったように思う。