新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

とても楽しいオペラ~『愛の妙薬』

 新国立劇場『愛の妙薬』を見た。ドニゼッティの有名作で、マルコ・ギダリーニ指揮、チェーザレ・リエヴィ演出である。

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 善良だが内気なネモリーノ(マッテオ・デソーレ)は、村一番の美女で賢く強気な性格のアディーナ(フランチェスカ・ピア・ヴィターレ)に夢中だが、アディーナはネモリーノの思いを知りつつわざと相手にしない。ネモリーノはアディーナの気を引くべく、村にやってきたニセ医者ドゥルカマーラ(マルコ・フィリッポ・ロマーノ)から、飲むだけで1日後にはあらゆる女からモテモテになるという愛の妙薬を買って飲む。ところがアディーナは自分に惚れているはずのネモリーノが妙に堂々と落ち着いているのに気を悪くし、はずみで村にやってきた軍人ベルコーレ(マルコ・フィリッポ・ロマーノ)の求婚を承諾してしまう。困ったネモリーノは軍に入隊し、支度金でドゥルカマーラからさらなる愛の妙薬を購入し、効き目を早めようとするが…

 わりと凝った舞台で、アディーナが読んでいる『トリスタンとイゾルデ』の本に引っかけたインテリアが多い。「トリスタン」と「イゾルデ」と書かれた大きな本の扉みたいな可動式の装置があり、これにドアがついていて、そこから人が出入りできるようになっている。さらに本の形の小道具を積んで即席の台を作ったりもしており、全体的にアディーナが読んだ本に出てくる愛の妙薬のお話のせいで村人たちが伝説を信じてしまい、だからこそ効かないはずの愛の妙薬がなぜか効いてしまう…みたいな雰囲気が醸し出されている。Elisir(妙薬)という大きな文字もステージ上にあり、これにいろいろな色の照明をあてながら動かして台や柱のように使っている。登場人物の衣装も髪もカラフルで、見た目が面白い。ドゥルカマーラが飛行機で到着するなど、けっこう現代的な演出だ。

 お人好しでちょっと抜けているがかわいらしいネモリーノと、賢いが見栄っ張りでなんかちょっとこじらせた感じのアディーナの一筋縄ではいかない恋路が美しいメロディにのせて面白おかしく語られるので、こういうカラフルな美術や衣装は全体のトーンにピッタリである。2年前にアイルランドで現代版の演出を見て大変面白かったのだが、今回はもうちょっと伝統的な演出ではあるものの、それでもだいぶポップな感じで非常に楽しかった。最後はちゃんとロマンチックな感じで2人が自分に正直になって終わるのも含めて、大変すてきなロマコメだと思う。