お笑いと不条理演劇の間で〜大見崇晴『「テレビリアリティ」の時代』

 大見崇晴『「テレビリアリティ」の時代』(大和書房、2013)を読んだ。

「テレビリアリティ」の時代
大見 崇晴
大和書房
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 日本のテレビバラエティ番組の歴史をリアリティという観点から分析していくというもの。私はお笑いのことは全然よく知らないので、情報の正確性などについては判断できないところも多いのだが、この手の本にしてはすごくきちんと一次史料にのっとって、他の人がたどってチェックもできるような感じで書かれているので、まずそこでとても信頼できそうだという印象を受けた。見たこともないようなかなり前のテレビ番組について論じてある箇所も多いので(私、「コント55号」とか見たこともないと思う)、初学者にはけっこうハードな気もするのだが、切り口の面白さで知識が少なくても読めるような作りになっている。

 ただ、私が一番面白かったのは日本のお笑いと不条理演劇の関連性の分析である。例としてあげられているシュールなコントを実際に見たことないのでえらそうなことは言えないのだが、たしかに本の描写を読んでいると、昔のお笑いというのは相当不条理演劇に近いものであるように見える。ベケットからマクルーハンまでいろいろ出てくるのだが、こういう視点は演劇関係者としてはむちゃくちゃ面白いし、UKのモンティ・パイソンの分析なんかとつなげてどんどん広げていくことができそうなのですごく可能性を感じた。あと、テレビのシナリオ作りというのはかなりハードな仕事で若さが重要だそうで、舞台からテレビに入ってくる人もいるんだけど、年をとって円熟してくるとテレビから舞台に移行していく作家も多いっていう話もとても興味深い。