これが文理融合ですよ〜『ギークマム:21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア』

 急に寒くなったもんでちょっと風邪気味で、少し家で養生してたので、その間に楽しそうな軽い本を…と思ってナタニア・バロン他『ギークマム:21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア堀越英美、星野靖子訳(オライリー・ジャパン、2013)を読んだ。

 ギークマムはもともとはWiredの関連ブログだったウェブサイトで、文字どおりギークな母親たちを中心に運営されているプロジェクトらしい。このプロジェクトには『怪しい伝説』に出演しているキャリー・バイロンなども参加しているそうだ。本の内容はタイトルどおり、ギーク(これ訳しにくい言葉だと思うのだが、オタクとガリ勉とをあわせたみたいな感じ?情報技術系の人に使いことが多いと思う)な母親が家庭を運営したり、子どもを教育したりする時に使えるアイディアをたくさん盛り込んだ本である。

 面白いのはこれ、理系じゃなく芸術系や人文系のギークネタが結構入っていることである。科学、ゲーム、SF、アメコミなどのネタ(「台所で科学実験」とか「ホウ砂でクトゥルフ作り」)が多いのはたしかだが、ふつうのギーク本ならあまりカバーしていないであろう、手芸(編み物とか、ルネサンスのコルセット自作とか)など伝統的に「女性」のものとされる文化もかなり入ってきている。女性はもともと、家事とか手工芸のいろんな分野に最新の情報技術を含めた技術を日常的にとりこんできたんだっていう話もあり、科学系と人文系を切り分けず、どちらもギークだ!っていうことで多彩なものを紹介しているのがいい。世の中では文理融合とかいうことが盛んに言われているが、おそらくそういうジャーゴンにはライトセイバーを手工芸で作ったり、台所で酵母パンを作ったり、発掘やら歴史探検やらをやったり、絵入りのファンジンを作るのは入ってない…と思うんだけど、ギークマムは(ギークダッドも!)別にジャーゴンを使って推進しなくても昔からふつーに文理融合してたんじゃないのか、とこれを読んで思った。

 ただ二箇所疑問がある。ひとつめは、ここに出てくる料理がどれもえらいまずそうで、まあこれは私のアメリカに対する偏見のせいかもしれないが、非常に食いたくない感じのものが多いっていうこと(青色系が入ったテトリスケーキとか、オートミールなんちゃらとか…)。もうひとつはホームスクールを高く評価してるけど、ギークがホームスクールやるってそれけっこう危険な気もする…ということである。『ダーマ&グレッグ』のダーマみたいに変な陰謀論を覚えたり、あるいはやたらにクリンゴン語を教えたがったりするような親がいないともかぎらない。


 お母さんたちが家でいろんな文化活動をしてる、という意味では前に読んだ『ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』にもちょっと似たところがあるかもしれない。あと、この後『ハウスワイフ2.0』も読んでみようと思ってるんだけど、あれはどうなのかね…?

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア
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