悪くはないが、まあ普通〜三越劇場『リア王』

 三越劇場で野伏翔演出『リア王』を見てきた。

 舞台両側にスロープを設置した二段になっているセットで、背景には雲みたいな布を吊して、これに照明をあてて色を変えることで場面ごとに雰囲気を変えている。舞台以外に客席を使用する演出がけっこうあり、とくに戦闘の場面などで通路を通って兵士が登場してくるところは良かった。戦争の殺陣の描写などはけっこう派手で見映えがするのだが、ちょっと飛んだり跳ねたりを強調しすぎかという気もする。衣装は日本風(というか蜷川風)なのだが、裾が大仰すぎるのか、前半では女優陣が衣装を扱いかねている感じがした。

 リア王役の横内正の演技はいいし、あと荒川智大演じるエドガーが大変良かった。けっこう笑いがとれるエドガーで、むしろ道化より面白おかしのではというところがある一方、痛切なところはちゃんとメリハリをつけている。一方でコーデリアはちょっと台詞回しがわざとらしいと思った。コーデリアは凄く演技ができるとかいうポイントがなければ、できるだけ声が低い女優をキャスティングしたほうがいいと思う。リアがコーデリアは優しい声だと言ってるし、何か演出上の意図があるわけじゃないなら落ち着いた低い声のほうがいい。

 演出についてはけっこう疑問点もあった。全体としては、前半はちょっとたるみ気味で、後半よくなった感じだったのだが、まあわりとふつうのリア王だったかんと思う。ただ最後のシメのところは全員、台詞を溜めすぎだ。それから、道化がただいなくなっちゃうみたいな演出だったのだが、あそこはお昼に寝る台詞を言わせながら退場させたほうがいいのではと思う。

 本筋とは全く関係ないところなのだが、照明をやたら点滅させる演出があり、あれは劇場の入り口とかにデカデカと書いておくべきだと思った。頭痛持ちや子どもは気分悪くなる人が出てもおかしくない。イギリスとかでああいう演出をするときは、上演中に嘔吐や昏倒が発生しないよう、必ず注意書きがある。