献本で頂いたミーナ・ホランド『世界の有名シェフが語るマンマの味』川添節子訳(X-Knowledge, 2017)を読んだ。
世界の有名シェフが語るマンマの味
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ガーディアンのフードライター、ミーナ・ホランドによる料理エッセイと有名なシェフや美食家へのインタビュー記事を収録したもので、俳優でグルメとして有名なスタンリー・トゥッチとか、給食改革で有名なジェイミー・オリヴァーとか、おなじみの人たちも出てくる。レシピも多数収録されている。全体的には美味しく気楽に読めるエッセイ集だ。
この本で一番面白かったのは、女性をテーマにした第五章だ。「家で料理をすることは自分が選んだことであり、好きなことでもあるのに、ときどき腑に落ちなくなる」(p. 147)という言葉に象徴されているが、料理が好きでやり甲斐を感じている女性でも、義務的に家族のために食事を作らねばならないことが続くと、どうも女性の伝統的な役割を押しつけられ、「顔のない女」(p. 147)になってしまったような気がしてくることもある。この章ではヴァージニア・ウルフなんかも引用されており、一方で家庭料理の再評価なども触れられていて、ためらいを乗り越えつつ料理を楽しくクリエイティヴなものとしてとらえたい…という結論になっている。去年は『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』も刊行され、これも読んでとても面白かったのだが、最近は料理本でもいろいろジェンダーとか文化などを掘り下げたものが多いようで、とても興味深い。