面白いけど、フェラーリはそんなに出てこないのでは~『フォードvsフェラーリ』

 『フォードvsフェラーリ』を見てきた。

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 60年代のモーターレース界を舞台に、フォードが4輪耐久レースに参入し、フェラーリに勝利するまでを描いた作品である。主人公のシェルビー(マット・デイモン)はル・マンで勝ったことのある優秀なドライバーだが、心臓病で引退することになる。フォードから耐久レースチームの立ち上げスタッフとして働くことになったシェルビーは、変人だが腕は抜群のイギリス人ドライバー、マイルズ(クリスチャン・ベール)に声をかける。シェルビーとマイルズは全力で車を開発するが、フォードの上層部はイマイチ耐久レースのことをわかっておらず…

 

 ちょっとタイトルから想像するのと違う感じで、フェラーリは出てきて負けるだけ…というか、フェラーリが開発を行う様子はほんのちょびっとしか出てこないので、開発合戦を両方のチームから描いている映画ではない。フォード内部のいざこざのほうが展開のポイントで、まず怒りっぽくて風変わりなマイルズをリクルートするのが大変だし、マイルズがその気になっても上層部がシェルビーの判断やマイルズの実力を信用しなかったり、上役のビーブ(ジョシュ・ルーカス)が介入してきたり、現場の苦労を上が理解していないというところが描かれている。

 

 レースの映画としては大変よくできており、モータースポーツのことを全く知らなくてもきちんとレースの場面はワクワクするように盛り上げて撮っているし、マイルズとシェルビーの人間関係の描き方がとても丁寧だ。わがままなマイルズに調整役のシェルビーが振り回される感じで、シェルビーの心臓が心配になるような展開がたくさんある。もともとスポーツマンなのにセールスや交渉をやらないといけなくなって右往左往する困らされ役のマット・デイモンもいいが、一番の見所はクリスチャン・ベールのコミカルな演技だ。ベールは真面目なメソッド役者御用達みたいな思い詰めた役よりも、これとか『バイス』みたいな笑えるところのある役のほうが、持ち前のユーモアのセンスが発揮できて良いのではないかと思う。ただ、シェルビー/マイルズはけっこう腐女子的には好みが分かれそう…というか、私はそうでもなかった。