グローブ座の配信で『ウィンザーの陽気な女房たち』を見た。エル・ホワイト演出で2019年に上演されたものである。
1930年代頃が舞台という設定で、女性陣はおしゃれなドレスを着ているし、音楽もジャズだ。フォード家もペイジ家もアッパーミドルくらいのかなり富裕な家庭という印象で、フォード家の場面ではカーテンとかクッションを使ってその時代のお金持ちの家を表現している。最後のフォルスタッフを欺す妖精祭りの場面ではけっこう衣装も飾り付けも華やかなものが使われ、みんなでジャズにあわせて踊る。
『ウィンザーの陽気な女房たち』は、シェイクスピア劇の中でもほとんど散文で書かれていて詩的なセリフが少ない上、ドタバタしたいろんな筋があってあまり整理されていない芝居なので、そんなに出来がいいというわけではない。そんなあまりやりやすいとは言えない戯曲なのだが、このプロダクションは笑いのツボを押さえてドタバタ風に作っており、なかなかうまくやっていると思った。フォルスタッフ(ピアース・クイグリー)は通常のフォルスタッフに比べると太っておらず、そのぶん底抜けに陽気な感じは減っているように思うのだが、ちょっとシニカルで昔の武勇伝が忘れられない伊達男くずれみたいに作ってあるのは悪くない。フォード夫人(ブライオニー・ハナ)が誘い込んだフォルスタッフを、ドミナトリックス風にムチを手にハイヒールで誘惑するなどという場面があり、ここはちょっとびびり気味のフォルスタッフが可笑しかった。