動くレンブラント~ウィーン国立歌劇場『ファルスタッフ』(配信)

 ウィーン国立歌劇場の配信で『ファルスタッフ』を見た。2016年12月12日の上演を記録したものである。演出家はデイヴィド・マクヴィカー、指揮者はズービン・メータである。

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 衣装やセットにすごく凝ったプロダクションで、全体に絵画のような舞台作りを目指しているようだ。とくに前半はまるでレンブラントの絵が動いているような印象を受ける。フォルスタッフ(アンブロジオ・マエストリ)が隠れた洗濯かごが窓から放り投げられる場面などはそのまま集団肖像画みたいだ。一方、終盤の森の場面は大きな月が丸く出た夜でちょっと雰囲気が変わっており、17世紀の絵画のようでもあり、木に時計がかかっているあたりなどはダリの「記憶の固執」のようなシュルレアリスム絵画のようでもあり、気味悪い仮装の人々がたくさん出てくるところはフュースリっぽくもあり、とにかくいろんな工夫で絵のように見せようとしている。この場面では例の洗濯かごが再登場するあたりもおかしい。

 音楽もしっかりしているし、笑うところもたくさんあって楽しいプロダクションである。フォルスタッフや陽気な女房たちのみならず、若い恋人たちであるフェントン(パオロ・ファナレ)とナンネッタ(ヒラ・ファヒマ)もなかなか良く、2人ともとてもロマンティックにアリアを歌い上げている。