若いのに苦労して老けてしまった人たちの史劇~G.Garage///『ヘンリー四世』

 G.Garage///『ヘンリー四世』を見てきた。『ヘンリー四世』2部作を3時間でやるというものである。河内大和演出で、フォルスタッフも河内が演じている。

 通路みたいなシンプルな横長の舞台で、両側に客席が置かれ、客席と舞台はかなり近い。パブの場面では上から蛇口のついた樽のフタみたいな部分が降りてきたり、グレンダワー(荻野崇)の部屋の場面では天井からぶら下がったなんかちょっと怪しい装置的なものに照明があたったり、わりと細長い空間を上から下まで使う演出である。戦場の場面では役者たちがススキを持って登場するところがあり、ハル王子(末原拓馬)とホットスパー(真衣美)が戦うところなどではこのススキがけっこう活躍し、ごちゃごちゃして何がなんだかよくわからなくなる戦場をシンプルだがうまいやり方で見せている。メインの役以外はひとりの役者がいろいろな役をとっかえひっかえつとめるようになっている。

 全体的にかなり若々しい『ヘンリー四世』なのだが、若いのに苦労して老けてしまった人たちの話みたいに見えるところもある。ハル王子(末原拓馬)とヘンリー四世(鈴木彰紀)の役者の年齢がたぶんほとんど変わらない…と思うのだが、そのせいでヘンリー四世はそんな年ではないのに苦労のせいでものすごく疲弊した大変気の毒な人みたいに見える。一方でハル王子とヘンリー四世がけっこう似たところがあるようにも見え、息子が自分に似ているのに全然行動を正してくれないので父親がイライラしているという感じもある。ホットスパーは女優が演じており、この芝居の中では一番筋が通っている…というか、謀反人だし癇癪持ちだが悪意は全くないし、一貫性のある主張をしていて迷信などにも惑わされない正直な若者になっている。フォルスタッフもなんだかそこまで年ではないのに疲れてきているみたいな感じがあり、ドル(谷山知宏)と生演奏で踊るところは、もっと若くて元気だった頃はさぞかしモテたのだろうと思われる魅力がある一方、いろいろ大変なことがあってもできるだけ楽しく若々しく生きねばならないと心を決めているような感じがしてなんとなく哀愁がある。