小物の故障もアドリブで乗り切る!~『終わりよければすべてよし』

 新国立劇場で鵜山仁演出『終わりよければすべてよし』を見た。今まで新国立で史劇をやっていた座組で問題劇2本をやるというものである。もう1本は『尺には尺を』だが、こちらのほうがたぶん上演回数はかなり少ないと思うので、見られるのはめったにない機会である。

 セットはわりと史劇の時と似ており、白黒基調だ。前方には浅い池があってそこに人が落ちたりするような演出もある。後ろに大きな布がかけてあり、この布の形が変わったり、その下から人が登場してくるようなところもある。前方両端には白い花が咲いた低木の枝みたいなものがある。途中でペーローレス(亀田佳明)が持っていた小物が壊れるアクシデントがあり、「明日から使えなくなっちゃうじゃないか」的なアドリブの台詞でカバーしていたのはちょっと面白かった。

 彩の国シェイクスピアで見た時はどうもルシヨン伯爵夫人がヘレナを娘分として昔からねこかわいがりすぎているのがバートラムがヘレナを拒絶する一因では…という気がしたのが、この演出ではルシヨン伯爵夫人(那須佐代子)はヘレナ(中嶋朋子)に目をかけているもののそんなにねこかわいがりしているような印象ではないし、バートラム(浦井健治)がヘレナをなんかそういうレベルではなく毛嫌いしているのがかなり明確だ。さらに良かれと思ってフランス王(岡本健一)がやっていることも事態を悪化させているという印象を受けた。このプロダクションのフランス王は見どころのありそうな若者を引き立てるのが大好きな一方で相手の若者がノリノリでないとすぐ機嫌を悪くする、現代でもよくいるタイプのデキるけどわがままな上司みたいな人で、ヘレナ、バートダム、ダイアナ(ソニン)に対して自分がいいと思うやり方で引き立ててやろうと思っているのだがなんとなくそれが空回りしている感がある。そういう点では善意と悪意が入り交じってすっきりしない話が展開する、かなりダークな芝居だと思うのだが、デュメーン兄弟(下総源太朗、宮津侑生)が笑わせてくれるあたりはメリハリがあり、全体としては楽しめた。