回転セットにスムーズな音楽~メトロポリタンオペラ『フィガロの結婚』(配信)

 メトリポリタンオペラの配信で『フィガロの結婚』を見た。2014年の上演で、演出はリチャード・エア、指揮がジェームズ・レヴァインである。

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 美術や衣装や1930年代を意識したおしゃれなものである。のっけからアルマヴィーヴァ伯爵(ペーテル・マッテイ)の愛人と思われるメイドのひとりが序曲にあわせて半裸で仕事に戻ろうと焦る描写があり、一方で1人で眠っているアルマヴィーヴァ伯爵夫人(アマンダ・マジェスキ)の姿も見えて、伯爵はスザンナ(マルリス・ペーターゼン)にちょっかいを出す前からずいぶんとメイドを口説いて色男ぶっていたらしいことがわかる。そしてこの時点から回転するセットがかなり大がかりに使用されており、音楽の流麗さと美術をうまく合わせている。全体的に歌もオーケストラもスムーズな流れを大事にしている感じだ。

 

 笑うところがたくさんあり、軽妙なコメディになっている。とくにフィガロ(イルダール・アブドラザコフ)がマルチェリーナ(スザンナ・メンツァー)の息子だとわかるところではみんなが歌いながら飛び跳ねたりしていてとにかくおかしい。ただ、フィガロはわりと重厚な感じで、ちょっとユーモアのセンスが足りないように思った。第4幕でスザンナに裏切られたと思うところみたいなシリアスな場面の歌いぶりは良いのだが、面白おかしい場面では少し軽さが足りない気もする。なお、小さい役なのだが、バルバリーナ役のイン・ファンは優しい歌声で、大変可愛らしいキャラクターになっていた。