音楽がいっぱいの楽しいプロダクション~オレゴン・シェイクスピア・フェスティヴァル『夏の夜の夢』(配信)

 オレゴンシェイクスピア・フェスティヴァル『夏の夜の夢』を配信で見た。ジョゼフ・ハジ演出で、2020年の初めの上演らしい。有料で、22日まで見られる。

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 セットは両側にスケートボードをする時に使うみたいなスロープがあり、後方には大きなアーチの枠がついた階段があって、舞台の左右どちら側からでものぼったりおりたりできるようになっている。このアーチにはフリンジのついた紐がたくさんぶらさがっていてスクリーンのようになっており、森の場面では植物のつるなどに見立てて使われている。このセットはなかなか魅力的なのだが、劇中劇で職人たちが使う塀がこのスクリーンとそっくりな作りで笑えた。同じような構造物でも効果的に使えば魅力的になるが、使い方を間違えると滑稽になるということがよくわかるデザインになっている。

 けっこうテクストを刈り込んで短めにおさえた上演で、ハーミア(ナビア・モンクス)を演じている女優がアフリカ系であるため、恋の魔法でおかしくなったライサンダーがハーミアの肌が黒いことを揶揄する台詞などはカットされている。音楽がふんだんに使われており、恋人達は森でギターを弾いて歌ったり踊ったりするす、職人劇団の劇中劇もミュージカルみたいだ。ヘレナ(ロイヤー・ボカス)はなかなか芸達者で、ギターも弾けるしタップダンスも踊れる文化系女子だ。とくにおかしいのはオーベロン(アル・エスピノサ、シーシアスと2役)が恋人達を寝かしつける際に、魔法の効き具合を恋人達を踊らせることで表現する演出だ。ここはいい具合にバカバカしくて大変面白い。

 

 全体的に職人劇団や妖精たちをわりと年配の感じにして、恋人達の若々しさを強調している。シーシアス/オーベロンとヒポリタ/ティターニアは同じ役者が1人2役で演じているのだが、とくにローレン・モディカ(非白人で低身長症の女優である)はいかにも大人の女性らしい色気のあるヒポリタ/ティターニアで(ボトムとの絡みはそこまで露骨ではないのだがそれても妖艶な雰囲気がある)、若くて可愛いらしくはつらつとしたハーミアや、恋に悩む乙女ヘレナとの対比がはっきりしている。最初はシーシアスとヒポリタはあんまりうまくいっていなくてシーシアスが必死に相手の機嫌をとろうとしている雰囲気なのだが、最後はけっこうこの2人が仲良くなっており、お似合いの大人のカップルになっている。