面白いところも多いが、疑問点も〜KUNIO13『夏の夜の夢』

 あうるすぽっとで杉原邦生演出、KUNIO13『夏の夜の夢』を見てきた。

 黒い星空のような背景に真っ白なセットで、上に「AMSND」(A Midsummer Night's Dreamの頭文字)という大きなロゴが置かれており、下には冷蔵庫とかベッドとか白い家具が置かれている。可動式の台が舞台を区切っており、この台を舞台の前後に動かすことによって舞台を広くしたり、奥行きを狭くしたりすることができるし、またオーベロンとパック、職人たちなどが台にのぼってアクションをすることもある。衣装も最後の劇中劇の場面以外は全部真っ白だ。構成としては、全体がヘレナの夢であるという枠がある。職人たちが妖精も演じるなど、ダブルキャストもある。

 ヴィジュアルについては悪くはないのだが、どうも『夏の夜の夢』というと白黒を強調した衣装が多くて私はけっこう食傷気味なので、斬新さはそんなに感じなかった。途中で舞台前方に置いた家具を赤と青のヒモで囲ってリングを作り、恋人たちのケンカをヒップホップバトルみたいに見せるところがあるのだが、他のところにあまりヒップホップ要素が無いので、まあ笑いはとれるかもしれないけどちょっとそこだけ浮いて見える。全体的に恋人たちのところは弱く、とくにヘレナがミスキャストだと思う。ヘレナは原作戯曲だとかなり背が高いはずなのだが、今回のヘレナはハーミアとそんなに背丈が変わらないので、やれ大女だチビだなどと2人が言い合いをするところが視覚的に面白く無い。ヘレナは背の高い役者を使うか、でなければ台詞をいじるべきだと思う。いくらヘレナの夢という枠があるからといって、見た目がけっこう小さいヘレナが背が高いと言われているのはちょっと視覚的に違和感ある(私は性別や人種なんかよりもキャスティングでは背がデカいか小さいかのほうがずっと大事だと思っているので)。

 ただ、職人たちのパートは今まで見た夏夢の中でも上から数えたほうがいいくらい面白かった。最後のアマチュア上演のところでは音響の使い方が上手で、最初はやたら甘ったるくクラシックを使っていたのに、シスビ−の嘆きの場面ではいきなり太鼓が鳴り響いてシスビーが能狂言のような調子で台詞を言い始めるというところがおかしい。ただの大根劇団というよりは、妙に意識が高くていかにも演劇っぽい演出を試そうとした結果大失敗しているみたいな雰囲気がかえっておかしかった。最後にシスビ−が剣をぶっとばして死ぬところはお腹を抱えて笑った。

 なお、この上演ではかなりぼかされてはいるもののティターニアとボトムがセックスする演出がある。今年に入ってから、翻案や高校演劇を含めると7回も『夏の夜の夢』を見たのだが、そのうち3本(これ、文学座カクシンハン)で妖精女王とボトムがセックスする演出をやっていて、空前のケモナーブーム到来かもしれない。今までの10年ではこういう演出、1回くらいしか見たことがなかったのに…