非常にセクシュアリティを強調した演出〜文学座『夏の夜の夢』

 文学座附属演劇研究所夜間部卒業発表会『夏の夜の夢』を見てきた。演出は松本祐子、文学座アトリエでの上演である。

 白いスティックを木に見立て、妖精は黒い服を着て…というあたりはけっこうよくある演出だと思う。妖精に白黒の服を着せる演出はずいぶんしょっちゅう見かけるのだが、私はあんまりいいとは思っておらず、もっとカラフルにしてもいいと思う。白布を使い、照明に工夫をする演出などは全体的にはジュリー・テイモア版『夏の夜の夢』に似ていると思う。若い役者陣は頑張っているが、ちょっと笑いが少ないのが残念だったかと思う。

 このプロダクションの特徴は相当にセクシュアリティを強調しているところである。ディミートリアスがついてくるヘレナを追い払おうとするところでは、服を脱いだりして露骨に性暴力をちらつかせて脅そうとしており、たとえ本気ではないとしてもそんなことを持ち出すなんでディミートリアスはずいぶんひどい男だな…という印象を与える。4人の恋人たちについては、途中で男性は上半身をはだけたりシャツ一枚になったりするし、女性陣も白い下着姿になり、けっこう露出度が高い(これは森の妖精たちにあわせて着るものをモノクロの色調にするという意味もあるが)。さらにタイテーニアとボトムがセックスする場面がシーツの影で見えるようになっており、私が今まで見た中でも実際にこのふたりにセックスさせる『夏の夜の夢』は1、2回くらいしかなかったので、珍しい演出に入ると思う(ボトムはむしろ美女に囲まれても何もできない不能感ある道化にして笑いを誘うことが多いと思う)。しかし、この演出をやるとオーベロンが妃をからかうつもりで結局他の男との不倫(しかも獣姦っぽい)の片棒をかついでしまうという展開になるので、もう少しプロットが複雑になるなとは思った。

 あと、最後の劇中劇の場面は、アマチュア劇団の大失敗茶番劇にしたいのか、最初はひどかったけどアマチュアでも頑張って最後まで真面目にちゃんとやった職人たちは立派だというふうに落としたいのか、方向性が半端でよくわからなかった。はじまりはひどい茶番劇だったのがだんだん役者が落ち着いてきてけっこう芝居らしくなり…というのはスタジオライフ版『夏の夜の夢』でやっていて、工夫さえすればちゃんと機能するのだが、このプロダクションも最初はめちゃくちゃなのだが、最後はピラマスもシスビ―もけっこう真面目にきちんと台詞をしゃべっているわりには最後に劇中劇の観客たちが「ひどかったですね」みたいな反応を示しており、ちょっと不可解だった。