ちょっと不穏な終わり方~紀伊國屋サザンシアター『夏の夜の夢』

 紀伊國屋サザンシアターで『夏の夜の夢』を見てきた。鵜山仁演出の文学座公演である。

 白い四角い枠がいくつか設置され、奥に楽器を演奏する場所があるという舞台である。このへんの美術は夜の妖精の世界をイメージしていると思われる。わりと正攻法…というか、ポストトークでも言っていたようにちょっとピーター・ブルックを意識しているようで、既にブルックの『夏の夜の夢』は古典になってきていると思うので、むしろあまり奇をてらっていない、笑いのツボを押さえたしっかりした公演に見える。

 全体的には妖精たちが活動的で引き立っている。オーベロン(石橋徹郎)とパック(中村彰男)の掛け合いがなかなかユーモラスで、とくにオーベロンがあんまり偉そうではなく、少々頼りないところもありそうな面白い王様になっている。パックが年長なので、手のかかる若主人と昔から仕えているお守り役みたいな感じである。恋人たちを取り違えて混乱が起こるところでは2人ともけっこう本気で失敗に動揺しているようで、なかなか親しみやすい妖精たちだ。

 最後の劇中劇の間にかなり特徴的な演出がある。この場面ではヒポリタ以外の女性陣が話さないのだが、途中でハーミア(平体まひろ)とディミートリアス(奥田一平)が皆が舞台に夢中になっている間に後ろで進み出て向かい合い、どうも昔の恋をあたためているみたいな行動を一瞬だけとる。これは非常に不穏…というか、そもそもディミートリアスはちゃんと恋の魔法をといてもらっていないというものあり、夢なのか現実なのかわからない不確かな感じがある。