超カラフルで客いじりも激しい上演~グローブ座『夏の夜の夢』

 グローブ座でショーン・ホームズ演出『夏の夜の夢』を見てきた。

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 今年グローブ座で見た他の上演同様、ジェンダーや人種は固定しないキャスティングである。ボトムが女優で(Jocelyn Jee Esien、ただし男という設定)、ヒポリタ/ティターニアとシーシアス/オーベロンを同じ役者が演じるのや、ヒポリタが箱に入れられて虐待された捕虜として出てくるのはブリッジ座の『夏の夜の夢』と似たような演出で、最近そういうのが流行っているのかもしれない(2016年のテレビ版でもヒポリタが完全に戦争捕虜だった)。シーシアスはいかにもいけ好かない君主なのだが、最後に2組の恋人達はもちろん、ヒポリタとボトムがデキてしまって祝宴のドタバタでシーシアスそっちのけでイチャついているという演出があり、最後にこの抑圧的な君主シーシアスが恋の歓びから取り残されて終わる感じになっている。

 

 全体にとてもカラフルな演出で、虹のような多色の派手な色合いの房を天上から垂らして森を表現している。ロバに変えられたボトムは全身、この華やかな色のシャラシャラした毛が生えたサイケデリックモンスターロバになってしまう(やたら派手なピニャータが動いているみたいに見える)。ティターニアのベッドが大きな公共用ゴミ箱を転用したような容器になっていることもあり、どっちかというとこのプロダクションのアテネの森は自然の場所というよりはプライドパレードかノッティングヒルカーニヴァルを開催しているロンドンの通りみたいである。生演奏の音楽もブルースやポップス風の華やかなものだ。パックはひとりではなく、いろんな役者がとっかえひっかえパックTシャツを着て出てきて、パックがひとつの場所やひとつの姿におさまらない存在であることを示している。

 

 わりと客いじりも激しく、お客のひとりを舞台にあげてスターヴリングを演じさせるということをやっている。お客がけっこう上手で、仕込みかと思うくらいだった。ちなみに暦を見る場面で客席からスマホを借りてみんなでセルフィを撮るというのをやっていたのだが、これはブリッジ座でもやっており、こちらも今流行っている演出なのかもしれない。

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