ドレスのチョイスがすごく疑問~サンフランシスコオペラ『チェネレントラ』(配信)

 サンフランシスコオペラの配信で『チェネレントラ』を見た。ジャン=ピエール・ポネルのプロダクションをもとにグレゴリー・フォートナーがディレクターをつとめたもので、2014年の上演である。

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 奥行きのある建築物の絵を用いたバロック劇場っぽいセットが大変きれいで、おとぎ話のような雰囲気を醸し出している。絵画みたいな凝った美術のわりには人間味とか温かみを重視した感じのプロダクションで、笑うところもたくさんある。冒頭部分のチェネレントラことアンジェリーナ(カリーヌ・デエ)はかなり雑用でくたびれて生活感のある雰囲気だし、ラミロ王子(ルネ・バルベーラ)も宮廷暮らしに疲れたわりと堅実そうな青年に見え、2人が初めて出会うところは似たもの同士でとてもお似合いだという印象を受ける。

 ただ、ドレスのチョイスがかなり疑問だ。初めて宮殿のパーティに行く時のアンジェリーナは黒字にいろんなキラキラした装飾のついているドレスを着ているのだが、正直、これは若くて可愛くてパーティデビューに胸を膨らませている未婚女性が着るドレスじゃない…というか、むしろパーティ慣れして落ち着いてはいるがとてもセクシーな中年女性が着るようなドレスだと思う。意地悪な義理の姉たちのカラフルなドレスとアンジェリーナの落ち着いた性格を対比させたいのはわかるのだが、色はグレーとか白とかでもいいからもっと若々しいドレスをアンジェリーナに着せたほうがいいのじゃないかと思った。