ティーンエイジャーの恋~東京文化会館『ロミオとジュリエット』

 東京文化会館東京バレエ団ロミオとジュリエット』を見てきた。東京バレエ団としてはジョン・クランコが振り付けたものの初演だそうである。このバージョンはたぶん初めて見た。

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 二層になった豪華なステージが特徴で、とくにパーティの場面やジュリエット(秋山瑛)の寝室の場面では後ろのアーチが効果的に使われている。ロミオ(池本祥真)とジュリエットが目覚めるところでは、追放が気になって眠りが浅いのか、先に目覚めてしまったロミオがアーチにかかっているカーテンを開けて外の光を入れようとする描写があり、このあたりはとてもうまい使い方だ。衣装も全体的に豪華である。

 振付の特徴なのか、ダンサーの解釈なのかはちょっとよくわからなかったのだが(たぶん前者かも)、このプロダクションではロミオもジュリエットもかなり幼いティーンエイジャーだと感じた。ロミオは恋に浮かれてキャハキャハ飛び回ったりちょこまか動いたり、落ち着きの無い青年だ。ジュリエットも不安そうにしていたかと思ったらくるりと恋に浮かれた表情や動きに変わったりする。2人とも無垢で気分の安定しない十代の若者で、ロミオがジュリエットをバルコニーから下ろしてあげて一緒に踊るところはとても微笑ましく、可愛らしい。マキューシオ(生方隆之介)もひょうきんだがわりと子どもっぽい若者だという印象を受けた。

 一方で第二幕の殺陣がけっこう激しく、無垢で子どもっぽいぶん、激高して感情が抑えられなくなっている若者たちの心情がよく出ていると思った。ティボルト(鳥海創)とマキューシオが戦うところでは周りの若者たちがけっこうこの2人に近づいており、非常に危険なケンカをしているという印象を受ける。平気そうなフリをしていたかと思うといきなり亡くなってしまうマキューシオといい、無垢なものが突然断ち切られる様子をさまざまな動きで示している。ここが物語上は若者たちが無理矢理、無垢さを奪われ、決断力を持って行動することを強いられることになるターニングポイントで、それをダンスではっきり表現していると思った。