50年代頃のイタリアが舞台の楽しいプロダクション~ウィーン国立歌劇場『チェネレントラ』(配信)

 ウィーン国立歌劇場の『チェネレントラ』を配信で見た。スヴェン=エリク・べヒトルフ演出、ジャン=クリストフ・スピノジ指揮で、2018年2月22日に上演されたものである。

 舞台は「サン・ソーニョ」というヨーロッパの小国らしいのだが、50年代くらいのイタリアを意識しているようで、着るものやセットは『ローマの休日』みたいである。ラミロ王子(マキシム・ミロノフ)の居城にはイタリア国旗の三色に鎌(たぶん農業を象徴)とエビ(漁業を象徴)を添えた、ソ連の国旗をイタリアンにしたみたいな旗がかけられている。セットの一階部分にはクラシックカーのコレクションを置く車庫がある。

 チェネレントラことアンジェリーナ(イザベル・レナード)もラミロ王子もメガネをかけた真面目で大人しそうな若者で、見かけは華やかだが政治的には保守的そうな王国の文化にあまり適応できていない雰囲気である。そういうわけでこの二人は似たもの同士で惹かれ合う。最後の場面では、国旗の間にかかっていたいかめしい軍服姿の王の肖像らしいものがくだけた雰囲気の若きカップルの肖像に変り、新時代の幕開けとなる。主演の二人が知的で地味な若者なので、衣装などはあまりおとぎ話っぽくない、趣味はよいが派手すぎないものを選んでまとめている。もう少し尖ってもいいかと思うところもあったが、全体的によくまとまっていて楽しく見られるプロダクションだった。