マジックの芝居~フォルジャー・シェイクスピア図書館『マクベス』(配信)

 フォルジャー・シェイクスピア図書館の『マクベス』を配信で見た。アーロン・ポズナーと、マジシャンのデュオであるペン&テラーのテラーが演出したプロダクションである。2008年の上演で、かなり画質が悪く、ちょっとわかりづらいところがあるのが残念だ。

www.folger.edu

 私はフォルジャー劇場で芝居を見たことないのだが、けっこう客席と舞台が近い劇場であるように見えた。マジシャンが演出に入っているというだけあって見た目が凝っている。とくにマクベス(イアン・メリル・ピークス)が幻の剣をつかもうとするところはマクベスの後ろにある鏡にだけ剣が映るという仕掛けで、たぶん単純な特殊効果なのだと思うのだが、効果的な台詞回しや全体のホラーっぽい雰囲気と重なって驚くほど効果的である。

 血なまぐさいプロダクションなのだが、ショッキングな要素の使い方は効果的だ。マクベス夫人(ケイト・イーストウッド・ノリス)の夢遊病の場面では本当に手から手が出てきて、マクベス夫人の白い寝間着がかなり血まみれになる。この大量の血が出てくる演出は、悪夢に悩むマクベス夫人にとって自分の手がどう見えているかをわざとお客さんにも見せるというもので、あまり見かけない演出だがこういうホラー風の演出でやるならばとても良いと思った。

  全体的に演出はスピード感重視である。バンクォー殺害とマクベスマクベス夫人の会話がスプリットスクリーンみたいに同じ舞台の上で同時進行するというこれまたスリラー映画みたいな演出がある。マクベス夫人はかなり強引で信用できなさそうな女性だという印象を与えるのだが、マクベスはそんな妻を心から愛していてそのペースにのせられてしまう。