アマゾン族の崩壊~劇団ワンツーワークス『男女逆転<マクベス>』

 劇団ワンツーワークス『男女逆転<マクベス>』を見てきた。男女の役をほとんど全部入れ替えるというもので、原作で男性の設定の役は女性に、女性の設定の役は男性になる。つまりマクベスが女性という設定になり、マクベスの配偶者がマクベス夫人ならぬ夫君になり、ダンカン王とかマクダフとかバンクォーとかも全員女性になるという野心的なプロダクションだ。女優が男役を演じるのではなく、設定じたいを女性に変えてしまうという方針である。

 女性たちの衣装が、スコットランドとか北欧とかにありそうな厚手の服装というよりはちょっと映画『ワンダーウーマン』なんかを思わせる地中海風の軍装なのもあり、女たちはアマゾン族みたいだ。さらにダンカン女王(有希九美)がかなり名君らしいたたずまいで、全身から優しさと徳がにじみ出ているみたいなキャラクター造形なので、物語開始時点のスコットランドはまるで高潔なアマゾン族が支配する素晴らしい王国に見える。一方でマクベスの夫(奥村洋治)がリチャード三世ばりの陰謀家として演出されており、それにちょっと神経質なマクベス(関谷美香子)がのせられて…みたいな展開になる。マクベスの夫だけではなく魔法使いたちも男性なので、まるで悪い男のせいで素晴らしいアマゾン共同体が崩壊する話のように見える。これはこれでまあ面白いのだが、この芝居の演出としていいのかな…という気もする。

 

 性別が問題になる台詞はけっこううまく変えていたりして工夫はちゃんとあるのだが、いくつか疑問点はある。女性たちの台詞の女言葉がとくに序盤、ちょっと過剰すぎてあまり女優陣がうまく扱えていないように聞こえるところがいくつかあった。女言葉をもう少し抑えて、台詞回しで女性陣の高潔さとか優しさを示すようにしたほうがもっと効果あると思う。あと、地獄の門番だけは性別が変わらず男のままだったのだが、あれはなぜだろう?別に門番を女性にしてもいいと思うし、そういう演出も見たことあるのだが…