夫婦漫才マクベス〜『マクベス〜The tragedy of Mr. & Mrs. Macbeth』

 シアターXでwitsによる『マクベス〜The tragedy of Mr. & Mrs. Macbeth』を見てきた。ご招待いただいたものである。演出は西悟志で、大部分はチョウソンハと池田有希子の2人芝居である。

 ほとんどセットのないところでやる、夫婦漫才みたいなシンプルな2人芝居である。最後にマクベス夫妻の遺影が設置されるところ以外はあまり装置類も使用されない。魔女の役なども2人で演じており、2人で楽器を演奏したりしながら魔女の演技をする。

 全体的としては勢いのある面白い2人芝居で、夫婦漫才としてデフォルメしたおかげで、元々の作品にある不条理な笑いの要素がかなり強調されていると思う。『マクベス』は魔女の予言に振り回される人々の物語で、予言に足をすくわれるオチも悲劇といえばそうだが実は非常にくだらない人間の欲を描いているとも言えるので、どこか笑える要素がある。漫才にすることでそういう人の愚かさを笑うところが際立つようになっている。

 さらに夫婦漫才にすることで、マクベス夫妻が完全に2人だけで完結する閉じた世界に生きていることが強く打ち出されるようになると思った。そのため、マクベス夫人が亡くなって池田有希子が退場してしまった後のチョウソンハのマクベスは非常にぶざまで、何も拠るところのない裸にされた王に見える。

 ただ、いくつか演出に疑問点もあった。リズムの関係でたまに英語の台詞を入れたりしているのは、かえって全体のまとまりを崩すので不要ではないかと思った。あと地獄の門番の場面だけ別の役者にやってもらうというのも、マクベス夫妻しかいない世界の統一感を殺ぐのでやめたほうがいい。地獄の門番の台詞のモダナイズもちょっと諷刺が緩いように思えたし、このあたりはもっと改善の余地があると思う。