ほとんどミュージカルみたいな上演~ストラットフォード・フェスティバル『十二夜』(配信)

 ストラットフォード・フェスティバルの配信で『十二夜』を見た。2011年上演の映像で、デス・マカナフ演出のものである。

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 難破船のようなイメージのセットで、衣装はわりと時代劇っぽいところもあるのだが(1920年代風のスーツとかスポーツ用の衣装が出てくる)、美術は全体としてかなり現代的である。とにかく音楽が多くてミュージカルかと思うような演出で、舞台上にピアノやらギターやらが出てきて登場人物がみんな歌う。フェステ(ベン・カールソン)やヴァイオラ/シザーリオ(アンドレア・ルンゲ)が歌うのはよくあるが、このプロダクションでは他のキャラクターもみんな歌う。オリヴィア(サラ・トパム)やサー・トウビー(大スターで去年お亡くなりになったブライアン・デネヒー)なども歌っており、もともと歌う役のフェステはロックスターみたいに大活躍である。キッチンでフェステやサー・トウビーが"Hold thy Peace"を歌うところはまるでツアー後にバンドがホテルで大暴れしているみたいだ。サー・アンドルー(スティーヴン・ウィメット)がこのキッチンでこっそりピザの宅配を頼んでいたり、細かいギャグも組み込まれている。

 このピザ場面をはじめとして笑うところもたくさんある。ヴァイオラ/シザーリオとサー・アンドルーの史上最弱同士の決闘は笑えるし、最後にセバスチャン(トレント・パーディ)が出てきて兄妹が再会するところではオリヴィアやアントニオ(マイケル・ブレイク)がいちいち驚いていて非常に笑える。サー・トウビーやサー・アンドルーがベテランで安定感があるのはとてもよく、とくにデネヒーのサー・トウビーは実に楽しく、貫禄もあるキャラクターで良かった。全体的にはちょっと好き嫌いが分かれそうな気もするが(音楽と笑いが中心でちょっと忙しすぎると思う人もいるかも)、私は非常に好みのプロダクションである。