赦しがテーマなのはいいが、コントは要らないのでは…言葉のアリア『テンペスト』

 言葉のアリア『テンペスト』を見てきた。佐々木雄太郎脚色・演出による公演である。

 前回の言葉のアリアの公演『から騒ぎ』同様、男性の役柄を女性にし、赦しを前面に出した作りである。主人公のプロスペローはプロスペラー(滑川恭子)だし、弟のアントーニオはアントワネット(夏葵、なぜかアントーニアではない)だ。兄弟の諍いは姉妹の諍いになり、アントワネットは『から騒ぎ』のジョヴァンナ同様、ちょっとゴスっぽくていろいろ不満を募らせている女性として描かれている。なお、ファーディナンドは男性役のままなのだが、女優(小寺絢)が演じている。全体的にプロスペラーがそんなに怖くなく、婚約祝いの見せ物の場面で急に陰謀のことを思い出して激昂するところなどはカットされており、かなり優しい母親らしい人物になっている。

 そういうわけで優しい赦しを重視する作りはいいのだが、途中で婚約祝いの見せ物をコントにするのは絶対にやめたほうがいいと思った。最初からエアリアル(鹿島渚)が軽やかに踊り回ったりしているんだから婚約祝いの見せ物も踊りにすればいいのに…と思うのだが、あんまり面白くはないコントになっている。さらにちょっとしたデブ自虐ネタとかもあって(そんなにイヤな感じのものではないが)、まったく全体の雰囲気にあわないと思った。