全部を丸く終わらせる~言葉のアリア『から騒ぎ』

 言葉のアリアによる『から騒ぎ』を見てきた。佐々木雄太郎演出で、劇場MOMOで上演されたものである。

 全体的に和解や調和を強調する柔らかめの演出である。ベネディック(シミズアスナ)もクローディオ(鈴原紗央)も女優が演じているが男性という設定で、一方でドン・ペドロ(須藤翔)の弟ドン・ジョンにあたる役柄は妹ジョヴァンナ(黒須みらい)に性別じたいが変更されている。ベアトリス(水谷千尋)とベネディックの丁々発止のやりとりはツボを押さえていてかなり笑えるが、一方でドン・ペドロ兄妹の関係がけっこう脚色されていて際立つようになっている。ドン・ペドロは大変颯爽とした貴公子なのだが、妹のジョヴァンナは黒いドレスに身を包んだゴスくて根暗でビッチィな不良娘である。兄妹で非常に仲が悪く、とくに妹のほうは人気者の兄に軽んじられてひどく鬱屈しているということが序盤から示唆されている。最後は結末が変更され、これまで妹を軽視していたドン・ペドロが自分の行動にもジョヴァンナ不良化の一因があるからと反省して妹を許して、兄妹の和解で終わるようになっている。ひとりだけ関西弁を話していておそらくよそ者扱いされていたのだろうと思われるボラチオ(太立健)も許してもらうという大変穏やかで平和な仲直りの雰囲気に満ちた結末になっており、これは今のようなとげとげしいご時世に少しでも後味のいい芝居を…ということなのかもしれない。

 全体的に台詞などはもう少しこなれたほうがいいと思うし、とくにダメ警官たちのくだりは笑わせ方が足りないと思う。また、途中のパーティのくだりで女性陣が半端なセクシーダンスみたいなことをするのは正直要らない…というか、ヒーローもベアトリスもあの手の踊りが得意そうなタイプには見えないし、さらにああいうことをするならもっと大勢で踊るべきで、ひとりひとりちょっとずつ踊るのではかえってしょぼくれて見えるのでやめたほうがいいと思う。とはいえ、とても優しく、とくに終盤はさわやかに見られる『から騒ぎ』だった。