テンポのいい芝居だが、女性の扱い方が…『ハムレットのための特別席』

 下北沢「劇」小劇場田窪一世作・演出の『ハムレットのための特別席』を見てきた。32年前に初演された作品の再演だそうである。

 圭介(田窪一世)はかつては新進気鋭の役者だったが、今は演技の仕事も減っており、喫茶店で雇われマスターの仕事をしている。娘のくるみ(河合雪絵)とはあまりうまくいっておらず、妻は15年ほど前に出て行ってしまっている。ところがある朝突然、姉の純子(鶴屋紅子)、長年の役者仲間である瑠麗男(豊島歩)、急に付き人になりたいと言ってきた照美(逢川ともみ)、前妻の小夜子(岩村水咲)が一度に転がり込んできて泊めてくれと言い出す。

 テンポのいい会話劇で、笑えるところはたくさんあるのだが、全体的に見るとかなり女性の扱い方が古いと思った。家族のために食事を作るのはもうイヤだと言って出てきた純子が、息子から家が散らかり放題だと聞いて心配になって帰宅してしまうオチは、純子の不満がなあなあにされてしまっていてずいぶんと古くさいと思った。さらに照美が育児ノイローゼだということがわかったのに、みんな照美の精神的ケアを考えずに家に帰そうとしているあたりもちょっとひどいと思った。圭介の暴力はけっこうさらっと流されてしまっており、このへんもちょっと気になる。男性の精神的危機には甘いのに女性の精神的危機はあまり丁寧に扱っていない芝居だなぁ…と思った。