階級や背景の違う女性たちが演劇愛で結びつく物語~『WE HAPPY FEWわれら幸運な少数』

 劇団昴による『WE HAPPY FEWわれら幸運な少数』を見てきた。イモジェン・スタッブズの戯曲で、芦沢みどり訳、千葉哲也演出である。この作品は以前に戯曲を英語で読んだことがあるのだが、実際に舞台で見るのははじめてである。

 アルテミス・プレイヤーズという第二次世界大戦中に活動していた女性だけのシェイクスピア劇団(シェイクスピア以外の作品もやるのだが)の物語だが、これは実在するオサイリス・プレイヤーズという女性劇団をモデルにしている。作中のアルテミス・プレイヤーズはミドルクラスでたぶん教育もあるへティ(高山佳音里)を中心に結成されるが、けっこういろいろな階級や国籍の女性陣が参加し、戦時中の教育を担うため、子ども向けの学校公演を中心にイギリス中を巡業する。戦時中に予算と認可を得るだけで大変なわけだが、そこは愛国的にイギリス文化を守らないと…というような精神に訴えてなんとかし、いろいろ苦労しつつ公演を続ける。

 女性同士の連帯や演劇愛が楽しい作品だが、一方でそれぞれの女性の人生の辛さもほの見える。とくにヘレン(林佳代子)の毒親っぷりがけっこうキツく、娘のロザリンド(上林未菜美)の母娘の確執はつらい感じである。へティのオチもつらい。一方で戦争が女性に活動の場を提供し、階級などの制限を超えることを可能にしたというイギリスの事情もきちんと描かれている(『スカートをの翼ひろげて』でもこういうのが描かれていた)。

 この演出のいいところは、日本のプロダクションにしてはワーキングクラスとミドルクラスの女性キャラクターの雰囲気があまりステレオタイプにならない感じで書き分けられているところだ。チャーリー(舞山裕子)とアイヴィ(古谷みちる)はワーキングクラスの女性なのだが、2人とも着ているものとか話し方の感じが戯画化されずにくだけた印象を与えるものになっている。アイヴィとロザリンドは恋人同士になるのだが、並ぶと階級が違っている雰囲気がけっこうある。こういうのはあまり日本のプロダクションではうまくいかないことが多いので、とても上手にやっていると思った。