職場での最悪の1日~『アシスタント』(試写)

 キティ・グリーン監督『アシスタント』を試写で見た。

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 ジェーン(ジュリア・ガーナー)は大学を出たばかりで映画会社に就職し、オフィスでいろいろな事務や雑用をするアシスタントとして働いていた。誰よりも早く出勤し、一番遅く帰る多忙な業務だが、映画界らしい華やかなところはほとんどなく、職場の雰囲気はハラスメント気味であまり居心地は良くない。そんなある日、ジェーンはボスが他の女性に対してやっているセクハラに耐えかねて人事に報告をするが…

 ハラスメントだらけの職場の最低の1日を描いているという点では『サポート・ザ・ガールズ』みたいな話なのだが、ずっと陰鬱でスリラー風味の作品である。明らかにワインスティーン問題を下敷きにしている作品で、そこは『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』の類似作と言えるのだが、『アシスタント』のほうは職場の内部の、しかも実際に露骨なセクハラを受けたわけではない(ものの、パワハラや立件しにくい微妙なセクハラは継続的に受けている)女性社員をヒロインに、異常な長時間労働や、本来業務でないことまで社員にやらせている悪質な職場環境をリアルに描いている。

 全体的に職場のイヤな雰囲気の丁寧な描き方が絶妙である。ヒロインは若い女性で新人であり、しかも勤勉で使えるがどうも容姿がボスの好みではないということで、雑用や尻拭いみたいな仕事ばかりやらされている。一方でボスの好みの華やかな容姿の女性は明らかにセックスを要求されており、ヒロインはそういう職場環境に抗おうとするのだが、なかなかうまくいかない…という絶望的な話である。とくにヒロインが他の女性について心配している時、同じ会社の別の社員から「あなたはボスのタイプじゃないから大丈夫だ」みたいなことをあからさまに言われるところが非常にイヤな感じがする…というか、そういう発言が出てくるじたいこの職場が完全におかしいのだが、そのことに発言者が気付いていないのが怖い。