とあるスポーツバーマネージャーのサイテーな1日~『サポート・ザ・ガールズ』

 アンドリュー・ブジャルスキー監督『サポート・ザ・ガールズ』を見てきた。

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 舞台はテキサスのどこかの高速沿いのスポーツバーレストラン、「ダブル・ワミーズ」である。ワミーズのマネージャーであるリサ(レジーナ・ホール)はとても優秀で真面目だが、朝からボーイフレンドとの暴力沙汰でお金が必要なシャイナのための支援(ジャナ・クレイマー)、盗みに入ったまま出られなくなった強盗への対応、映らなくなったテレビ、新人ウェイトレスの雇い入れ、人種差別的で無能でろくでもないボスへの対処、決まりに違反してタトゥーを入れたウェイトレスの解雇、離婚寸前の夫の新居探しなど、次々とトラブルが降りかかる。終盤のごく一部以外はほとんど1日の話である。

 職場でのサイテーな1日を描いたお仕事コメディなのだが、リサが黒人女性で職場がセクシーなウェイトレスが売りのスポーツバーだというところがポイントだ。ダブル・ワミーズという店はスポーツバーレストランなのだが、チェーンではないローカル店で、そこまでお色気売り・男性向けというわけではなく、家族連れや女性スポーツファンもギリギリ来られるラインを狙っているらしい。それでも男性客から女性従業員へのセクハラは多いので厳しく対処する必要があり、従業員の女の子たちのことをいつもとても親身に考えているリサは苦労している。ところが白人男性である上司はとんでもないアホで、リサをクビにしてしまう。

 大変な話でいろいろ悲惨なところもあるが、ユーモアがあり、テキサスのワーキングクラスの女性たちの人種や年齢を超えた連帯を、非白人の中年女性というあんまりメジャーな映画では視点人物にさせてもらえないキャラクターを中心に描いている。従業員を演じる女優陣はもちろん、お客さんでおそらくブッチレズビアンだと思われるボボ(リア・デラリア)のキャラもいい。女性たちがみんな協力しあって、それこそ「サポート・ザ・ガールズ」の精神で暮らしているのがとても爽やかである一方、そうした「イイ話」だけでは済まないところもリアルだ。とくに暴力的な彼氏にハマっているシャイナのプロットは全く美化されておらず、かついかにもありそうな話である。そういう大変なことが終わり、根本的にはいろんなことが解決されていないながらも、日が変わってお店ではないところで女性たちが再会し、屋上で叫ぶラストはとても温かみがある。