『ザ・スクエア』+『ター』みたいな映画~『コンペティション』

 ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン監督『コンペティション』を見てきた。

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 大富豪であるウンベルト(ホセ・ルイス・ゴメス)は人の記憶に残るようなチャリティをやりたいと思い、ノーベル文学賞作家の作品を原作とする大作映画に出資することにする。才能溢れる女性監督ローラ(ペネロペ・クルス)、舞台出身の名優イバン(オスカル・マルティネス)、スターであるフェリックス(アントニオ・バンデラス)が揃って映画を作り始めるが、監督は相当な変人で、奇抜なアプローチで役者陣を困らせる。さらに主演俳優2人もわりとエゴが強くてぶつかりあってばかりで、なかなか映画作りは円滑に進まない。

 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』の映画版みたいな感じだが、あれよりは多少わかりやすく(映画がテーマだからかもしれないが)、笑えるところもたくさんある。全体的に建築物のデザインがかなりオシャレなのもちょっと『ザ・スクエア』を連想させる。ただ、このローラみたいな国際映画祭で賞をとりまくっている気難しい変人の女性映画監督って実在するかな…とも思ってちょっとリアリティは薄いように感じた一方、『ター』とかと同じで女優にとってはやりたい役だろうなという気はした。このローラは大変エキセントリックで、どうもあまり大きな役ではないものの一応主演級の若手女優とデキているようであり、セクハラかと思ったら女優は出資者の娘でむしろデキてはまずいのではと思われる状況だったり、主演俳優2人にとんでもないハラスメント演出をかましたりする。一方で役者陣もいい勝負で、ハラスメントを受けたフェリックスはとんでもないやり方でローラとイバンを騙し、それに怒ったイバンがフェリックスを騙し…ということで、どんどんエスカレートしていく。映画業界人のしょうもないエゴを諷刺した作品である。