そこ、ほんとに世界のはしっこなのかな?~『世界のはしっこ、ちいさな教室』(試写)

 『世界のはしっこ、ちいさな教室』を試写で見た。世界各地の学校があまりないところで教育を行おうとしている3人の教員を追ったドキュメンタリーである。場所はブルキナファソ、シベリアのエヴェンキ人居住地域、バングラデシュ北部の水辺である。教員は全員女性だ。

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 どこも教育はとても大変である。サンドリーヌ先生が教えることになったブルキナファソでは識字率向上が急務だということなのだが、学校はかなりの僻地で設備も整っていないのに生徒数はけっこう多い。スヴェトラーナ先生が教えているエヴェンキの学校がある地域では、子どもたちがロシアの文化に触れる機会はあるものの伝統的なエヴェンキの文化を学ぶ機会が減少しており、この文化を保つためにも学校が必要だ(ウクライナ侵略が始まって以降、ロシアの少数民族はいろいろ冷遇されているのだが、スヴェトラーナ先生の学校の地域の人たちは若者が大量に兵士にとられて死亡したり、物資が完全に不足したりせずに無事に暮らしているだろうかと思ってしまった…)。バングラデシュではタスリマ先生がボートスクールで教えているが、地元の人たちは貧しく、女の子は学校に行かせず早く結婚させようとするので女性が教育を受けられず、そのため仕事にもつけなくて貧困の連鎖がとまらない。

 一番印象に残ったのはタスリマ先生のエピソードである。船の上の学校はなかなか風光明媚な環境なのだが、勉強したい女の子の生徒を親が家に連れ帰ろうとするなど、地元の貧困と性差別のせいでなかなか教育がすすまない。フェミニストであるタスリマ先生はそういう中で児童婚は禁じられていることなどを教え、子どもたちに身を守る術を教える。完全にうまくいくわけではないが、そんな中で学問に目覚め、きちんと教育を受けて上の学校やもっと専門的な職業を目指そうとする子どもたちもいることが描かれており、大変だとはいえそこは希望がある。

 一方でちょっと気になったのは日本語タイトルである。見ていてこういう地域はそんなに世界のはしっこなのかな…と思った。むしろこういう地域をはしっこ扱いするのがあんまり良くなくて、子どもたちが教育を受けようとしているこういう地域こそが世界の中心であるべきなのではないかとも思う。