イーサン・ハント、幽霊と戦う~『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(ネタバレあり)

 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を見てきた。

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 ロシアの潜水艦セヴァストポリがどうやら新しいAIのせいで沈没するというトラブルが起きる。エンティティと呼ばれるこのAIはどうも自律的にいろいろなことに介入しているらしく、世界中がこのAIを狙うようになった。イーサン・ハント(トム・クルーズ)はこのAIを破壊すべく、チームのメンバーとともに戦いを始めるが…

 トム・クルーズバイクで飛び降りるメイキング動画が事前に公開されており、こんなに派手にアクションの一番いいところを公開して大丈夫なのか…と思ったものの、実際に映画で見たらけっこうメイキング動画はアクションそのものの実態はそこまで把握できないように気をつけて作っており、本編にお楽しみをとっておいてくれていたことがわかって、そこはなるほどなぁと感心した。全体的にクルーズ演じるイーサンのアクションは大変迫力がある(ただしそんなに危険なことしなくてもいいですよトム…とは思う)。アクションの荒唐無稽さがどんどん増しているので、このシリーズはもはや、ややシリアスで主人公が固定しているワイスピのようになっていると思う(最近、やたら仲間推しでもあるし)。

 一方でお話はなんだかなぁと思うところもある。作中でエンティティと呼ばれているAIは、どうも自我的なものがあるらしくて現代人のAIに対する恐怖を反映した話ではあるのだろうな…と思うものの、どうもAIの現れ方が妙に人間っぽく、人間離れした先端技術というよりは、悪霊か恨みを抱いて死んだ人の幽霊みたいな感じである。パーティにエンティティが現れたり、ベンジー(サイモン・ペグ)の声を使ってイーサンを騙そうとしたりするところなど、なんかもうイーサンが神出鬼没の幽霊と戦っているみたいな感じになっている。全体的に幽霊ホラーっぽいアクション映画だ。

 さらにイーサンがあんまり見た感じは信頼できなそうなグレース(ヘイリー・アトウェル)に対して急に責任を感じて必死に守ろうとするあたりも唐突な感じがする。とくにイルサ(レイチェル・ファーガソン)が死亡した後にこのイーサンのグレースを守ろうとする態度が強くなって何やらロマンティックな感じになるので、お前イルサがあんなに大事だったのでそれでいいんか…とちょっと思ってしまうところもあった。グレースがものすごく賢く頼れるカリスマ性があるタイプだというならまあいいのだが、序盤は狡猾だが信用できないこそ泥みたいな感じなので、イーサンがグレースのどこをそんなに気に入ったのかがイマイチピンと来なかったせいでそう思うのだろう。