終わり方が全然好きじゃなかった~『さいあい〜シェイクスピア・レシピ〜』

 CHAiroiPLINの『さいあい〜シェイクスピア・レシピ〜』を三鷹市芸術文化センター星のホールで見てきた。スズキ拓朗の振付・構成・演出によるものである。いろんなシェイクスピア作品を取り入れつつダンスを交えた作品だ。高校生も3名参加している。

 女子高生の畑実(國保千怜)は母親を交通事故で失い、学校でもうまくいかずに不登校気味で、演劇部も辞めようと思っていた。母の事故現場に花を手向け、一緒に台本も捨てて車にぶつかって自殺をしようとしたところ、舗装道路から野菜が生えてくる。実は野菜にシェイクスピア劇を教えることになってしまう。

 実が野菜とシェイクスピアの短縮版を上演し、愛や人間関係について考えながらトラウマを克服していく様子を描いたファンタジーものである。『ロミオとジュリエット』の話がちょっとおかしかったりもするのだが、終盤まではけっこう良かった…ものの、終わり方が全然好きではなかった。実の父親(スズキ拓朗)は完全に子育てを放棄しており、娘が高校に行っていないらしいのに携帯電話で叱るだけで、母親を亡くした娘のフォローを一切しないクズ親である。ところが最後、実が野菜で弁当を作って父親に食べさせ、それによってなんとなく父親が娘を思いやる気持ちを取り戻すという展開になる。そもそもこの父親が何の努力もせず、まともな悔い改めもせずに父親らしさを取り戻すという結末がけっこう受け入れがたい。さらに娘が弁当を作ったのがきっかけとなれば、ジェンダーバイアスの観点からも子どもにケア労働をさせるのはダメだという観点からも余計受け入れにくい。途中まではわりと面白かったのに、なんじゃこりゃと思って劇場を出た。