試写 試写でシモーネ・ゴーダノ監督『泣いたり笑ったり』を見た。
妻とは別れているプレイボーイのリッチなトニ(ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ)と、真面目な寡夫である漁師のカルロ(アレッサンドロ・ガスマン)が恋に落ち、結婚することになる。しかしながら父親が急に男性と結婚(イタリアでは同性婚は完全に法制化されていないので、シビルユニオン)すると言い出した両家の子どもたちは仰天し、トニの娘ペネロペ(ジャスミン・トリンカ )とカルロの息子サンドロ(フィリッポ・シッキターノ)は両親が別れるよう画策を始める。この作戦はなかなかうまくいかないが…
同性婚はもちろん、既に大人になった子どもがいるような熟年同士の再婚や階級差のある結婚などにあるがちなトラブルを盛り込んだご家族コメディである。両家ともに問題があり、かなり金持ちで教養のあるトニは家族を顧みない相当ダメな父親である一方、家族思いのサンドロは伝統的な男らしさに価値を置く港町の文化で育ったこともあり、保守的で父親が男性を好きになったことを認められない。とくにトニは冒頭で娘のオリヴィア(クララ・ポンソ)に父親じゃなければ口説いてるというようなことを言って美貌を褒めており、オリヴィアが冗談だとはわかりつつまたか…という表情をしていて、一見洗練されているが実は無責任であんまり子どもの気持ちを考えずに発言するタイプであることが随所で示されている。さらにオリヴィアはペネロペとは母親が違って同じ時期にトニと愛人との間に生まれた娘だとか、トニは小さい時にペネロペのことを全く気にかけていなかったとか、いろいろ父娘問題が明らかになる。こんなダメ男と、思いやりのあるカルロが結婚していいのか…とは思うが、最後はトニが考えを改めてロマンティックな終わり方になる。
全体的にはけっこう雰囲気が『天空の結婚式』に似ている。2作を比較すると、たぶんイタリアでは同性婚を家族にどう受け入れてもらうかというのがけっこう社会的な関心事なのだろうと思う。この作品はそれに熟年の再婚と階級格差も組み込んでいるところが新機軸で、その点『天空の結婚式』よりも少し高い年齢層の観客に向いている映画だと思う。