女優の演技を見る芝居~『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

 新橋演舞場で『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を見てきた。有吉佐和子作の有名戯曲で、齋藤雅文演出である。本で読んだことはあったのだが、初めて見た。

 幕末の横浜の遊郭が舞台である。岩亀楼の遊女である亀遊(美村里江)は通訳の藤吉(薮宏太)と相思相愛だが、アメリカから来たイルウス(前川泰之)に気に入られ、かなわぬ恋を悲観して自殺してしまう。ところが瓦版で亀遊が攘夷女郎であり、外国人に身請けされるのを嫌って辞世の句を残して自害したという噂が広がってしまう。亀遊と親しかった芸者のお園(大竹しのぶ)は本当の事情を知っていたのだが、仕事の繁盛のために嘘をついて亀遊の派手な自害の話を酒席で聞かせてウケるようになる。

 全体的に主演女優の演技を見る芝居で、酒好きでだらしなく、面白おかしくてお調子者でもあるお園が笑わせたりホロリとさせたりするのが面白い。最初は亀遊の死について本当のことを言おうとしていたが、だんだん面白く尾ひれをつけた話をするようになり、最後は本当に自分が言っていることを信じているかのように見える。うまく立ち回る賢い女性であるようでいて酒が入るとてんでダメで、最後の大失敗はたぶん飲んだせいである。

 ただ、けっこう序盤は流れがスムーズじゃない芝居だな…という気もした。とくに亀遊がイルウス身請けの詳しい話を聞くタイミングがないまま自害してしまうので、前半はバタバタしていてどういうことになっているのかわかりづらく、イマイチ流れが悪いと思う。よく考えるといくら酒が入っているからとは言え最後のお園の大失敗もちょっと強引だとは思う。