良いプロダクションだが、音楽が新しすぎかも~『ガラスの動物園』

 シアタークリエで『ガラスの動物園』を見てきた。

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 わりと大がかりな家屋のセットで、右側に外につながる階段がある。紳士のお客様ことジム(竪山隼太)が来る時にはわざわざアマンダ(麻実れい)が階段にまで花を飾ったりしていて、しみったれた家を綺麗に見せようとするアマンダの努力がわかる美術になっている。手前の目立つところにローラ(倉科カナ)のガラスの動物園があり、ちょっと触っただけで壊れそうで極めて繊細だ。

 全体的に非常に繊細な演出なのだが、一方でウィングフィールド家の面々は全員けっこう美男美女なのに社交スキルが無いみたいな感じにそろえてあると思った。トム(岡田将生)はハンサムだしローラは可愛いのだが2人とも内向的で、さらに母親のアマンダも今でもわりとキレイで面白い人ではあるのだが、過去の栄光にしがみつきすぎでなんだかやることなすこと芝居がかっていて間が抜けているので、子どもたちがそれに追いつけなくて精神的トラブルを抱えているという感じである。母親がこんな大変な迫力のどぎつい女性でなかったら2人とももうちょっと気楽に生きられたのでは…という印象を受ける。さらにこのプロダクションのローラは正直、今ならパニック障害とか対人恐怖症とか、足の障害以外にも心のほうで診断名がつきそうなくらい度外れて内向的だ。ジム以外はみんなちょっとメンタルヘルスの問題を抱えているように見える。

 プロダクション全体としてはわりと良かったと思うのだが、ただアストル・ピアソラの音楽を使うのはちょっとやりすぎでは…という気がした。というのも、この芝居は1930年代くらいが舞台でその設定を変えていないのだが、ピアソラが音楽活動をはじめたのは40年代以降で、「リベルタンゴ」なんて70年代の曲である。音楽だけがちょっと設定からすると新しすぎて、ノスタルジアをそそる道具としてあんまりうまく機能していないように思った。