演劇セラピーとフィクションによる癒やし~アトリエ戯曲組『エアスイミング』

 アトリエ戯曲組『エアスイミング』を見てきた。この作品じたいは一度今年の4月に見ているのだが、全然違う演出の別公演である。

 何度見てもつらい話なのだが、前回よりもうちょっとベテランの役者陣でかつちょっとブルータルというか地味なセットで見てわかったこととして、この話は演劇セラピーがもららすフィクションの力による癒やしの物語なのではないかということがある。前回のプロダクションではポルフとドルフのくだりは映画スターのドリス・デイに憧れている少女たちの見た夢みたいに感じられたのだが、今回のプロダクションではもうちょっとつらい現実や病に対抗するための正気を保つ装置としての演劇という側面が見えたように思う。たぶん最近、メチャクチャな演劇セラピーの話であるMedicineを見たからそう思うというのもあるのだろうが、Medicineに比べると『エアスイミング』のポルフとドルフのくだりは、かなりきちんとドーラ(渡辺梓)とペルセポネー(吉村元希)が現実に対処するための演劇になっていると思った。暗い話だが、ドリス・デイとかドーラが話す女性兵士たちの話も含めて、意外とフィクションが持つ力についての話なんじゃないだろうか…そう思うと『蜘蛛女のキス』とも似ているなと思う。